研究課題/領域番号 |
20K03530
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分11010:代数学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
桂 利行 東京大学, 大学院数理科学研究科, 特任教授 (40108444)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | Coble曲面 / 正標数 / quadratic line complex / Kummer曲面 / 代数曲線 / Jacobi多様体 / Grassmann多様体 / K3曲面 / 準楕円曲面 / アーベル曲面 / ヤコビ多様体 / Richelot isogeny / 自己同型群 / Enriques曲面 / 有理曲面 / カラビ・ヤウ多様体 / エンリケス曲面 |
研究開始時の研究の概要 |
代数曲面の研究は20世紀初頭のイタリア学派の研究を嚆矢として、複素数体上の場合は小平邦彦による詳細で厳密な理論により一定の決着を見た。正標数の代数曲面は、その後、BombieriとMumfordによって研究がなされ、その分類理論は1977年に完成した。本研究の目的はその流れを汲み、正標数において、カラビ・ヤウ多様体を中心とする代数多様体の代数幾何学的・数論的な構造を解明することである。アーベル多様体、K3曲面、エンリケス曲面などのモジュライ空間、代数的サイクル、自己同型群の構造などの解明を目指して研究を行う。当面は標数2の有限自己同型群を有するエンリケス曲面のモジュライ数の決定が目標となる。
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研究実績の概要 |
Sを非特異完備代数曲面、Kをその標準束とする。完備線形系|-K|が空集合で|-2K|が互いに交わらないいくつかの非特異射影直線からなる時、SはCoble曲面であるという。金銅誠之との共同研究として、標数2における自己同型群が有限なCoble曲面をとりあげ、まずconductrixを分類し、その結果とCoble-Mukai格子を利用して、これらの曲面がnodal曲線のconfigurationによって7種類に、境界因子の個数を考慮すると9種類に分類できることを示した。また、各類に属するCoble曲面が存在することも示した。投稿していたCoble曲面に関するこの論文が本年度日本数学会のジャーナルに受理された。引き続き金銅誠之と共同で、19世紀末にKleinによって複素数体上考察されたquadratic line complexを標数2において研究した。種数2の代数曲線Cの超楕円曲線構造の分岐点は標数が2以外の時は6個で一定であるが、標数2の時は分岐点が1個から3個の3種類になり、その個数はCのJacobi多様体のp-rankに対応している。quadratic line complexを構成するGrassmann多様体ではない方の2次超曲面は、標数2の場合交代形式と対応するが、このJordan標準形は3個あり、そのそれぞれが構成された種数2の代数曲線のJacob多様体のp-rankと対応するという興味深い結果を得た。種数2の代数曲線の具体的な方程式も2次曲面の係数を用いて具体的に書くことができる。さらにそれから構成されるKummer曲面の方程式を計算し、そこに含まれる射影直線(trope)のなすconfigurationを決定した。また、特異点をもつKummer曲面を5次元射影空間の中の3つの2次式の完全交差として記述した。これらの結果を論文にまとめて投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ感染症の蔓延によって特に海外の研究者との共同研究の進行がこれまで遅れており、そのツケが本年度も残っていたが、金銅誠之名古屋大学教授と共同研究を進めていた有限自己同型群をもつCoble曲面の分類に関する51ページの論文がJ. Math. Soc. Japanに受理され、さらにこれも金銅誠之名古屋大学教授と共同研究として進めていたquadratic line complexの構造を標数2において解析する研究が進み、論文が完成し投稿することができたので、おおむね順調に進展している、とした。
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今後の研究の推進方策 |
投稿中のquadratic line complexの論文については、レフリーのレポート結果によっては指摘に従って改訂版を作成する。ここに現れる(特異点を有する)Kummer曲面は5次元射影空間の中で3つの2次超曲面の完全交差となるが、2つの2次超曲面と超平面の完全交差として4次のdel Pezzo曲面が現れる。この曲面を巡ってもKummer曲面と同様の幾何学を展開することがきることがDolgachevによって指摘されており、本年度はこの構造解析を行う。また、準楕円曲面の構造を持つEnriques曲面は加法群の非分離形式と関係しており、準楕円曲面構造の相対的Jacobi多様体のMordell-Weil群と準楕円曲面構造に付随する超楕円曲線のHasse-Witt行列の関係に関するDolgachev予想を研究する。高次元については、正標数の3次元のCalabi-Yau多様体上の微分形式の存在問題や標数0への持ち上げ問題もこの研究計画の研究テーマとして取り上げる。
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