研究課題/領域番号 |
20K03661
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12010:基礎解析学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
仲田 均 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 名誉教授 (40118980)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | エルゴード理論 / 連分数変換 / Farey グラフ / 虚2次体 / 虚二次体 |
研究開始時の研究の概要 |
A. F. Beardon、M. Hockman 達はFareyグラフを通して連分数展開のgeodesicの概念を導入した。本研究ではその概念を用いて測度論的あるいは確率論的研究に有効な手法を開発しこの分野に新たな展開を与える。また G. A. Jones, D. Singerman, K. Wicks 達の研究を発展させた幾つかの複素数に関する研究では3次元双曲空間での表現でも同様に測度論的、確率論的側面を連分数変換の手法に取り入れる。これらを通してグラフ理論を通した新たなエルゴード理論的な取り扱いを数論的変換一般に確立させる。
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研究実績の概要 |
2022年度は、事前の計画に従い虚二次体の整数により生成される Farey グラフに関する研究を行った。特に、類数が2以上の虚2次体の場合に互いに素となる同型なグラフが類数の個数だけ存在することを明らかにした。これらを虚二次体の Farey グラフと考えることは極めて自然であり、今後これらのグラフの構造を研究する予定である。虚二次体における Farey グラフの構造について研究を進めると共に、ユークリッド虚二次体の場合にその中のサブグラフを与える nearest integer 型複素連分数のエルゴード理論の研究を前年度に引き続いて行った。またアイゼンシュタイン数体の場合のKaneiwa-Shiokawa-Tamura 型連分数のエルゴード理論の研究を行った。とりわけ、複素2次元の空間の中にこの連分数を生成する変換の自然拡大の構成にほぼ成功した。またこの場合、アイゼンシュタイン数体の2次拡大の要素とその共役元の組が自然拡大の領域に属することが、連分数展開が純周期的になることを特徴づけることを証明した。 これら虚2次体の研究と並行して実数の場合に Farey グラフを与える Farey 写像のα型とよばれる一般化を試みた。従来の研究では 1/2≦α≦1 の範囲で自然拡大を通してこれらがすべて互いに同型になることが知られていた。今回の研究では √2 -1 ≦α< 1/2 の範囲で自然拡大の構成に成功し、ここでもすべての自然拡大がこれまでのものと同型になることを証明することに成功した。この研究はデルフト工科大学のCor Kraaikamp 准教授との共同研究である。次年度にはα型Farey写像の研究の先駆者である日本女子大夏井利恵准教授を加え、0 <α<√2 - 1 の場合に対してさらなる研究を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
国内の共同研究者との研究については順調であったが、コロナ感染が完全に終息しない状況の下で国外研究者との共同研究を潤滑に進めることが出来なかった。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度の研究で未完成であったKaneiwa-Shiokaw-Tamura型複素連分数の自然拡大の問題を令和5年度前半には完成させ可能な限り早く論文を作成する。Kraaikamp、夏井とのα-Farey 写像の研究も同様である。並行して、虚二次体上の Farey グラフの構造の研究についてはオーストリア、レオーベン大学の J. Thuswaldner教授との共同研究として行うが、特に5年度後半はこの研究に集中する計画である。分数イデアルと3次元双曲空間のカスプとの関係に焦点を当ててディオファンタス近似の測度論的問題と測地線のエルゴード理論的性質の関係について新たな視点を与えることを目指す。
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