研究開始時の研究の概要 |
これまでの研究で,「群の作用」と「ガウス和の計算」を併用した高次元有限射影空間における超平面交差数の計算法を考案してきた. この手法を発展・応用し, 2-交差集合を用いたアダマール行列の既存の幾何学的構成法を高次元化することで, 平方数次均整アダマール行列を組織的に生成する新たな構成法を開発する. また, 申請者の最近の研究で, アソシエーションスキームを通じ, (4×非平方数)次アダマール行列と均整アダマール行列との関係性が明らかになってきた. 本研究では, その関係に基づき, アソシエーションスキームの枠組みの中で, (4×非平方数)次アダマール行列を組織的に構成する手法・理論を確立する.
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研究実績の概要 |
本年度の研究では, ラテン方格型の素数冪の頂点数でない強正則グラフの構成を行った. 特に, T. Fujisaki (2004)によるpseudo-cyclicアソシエーションスキームを用いた強正則グラフの構成法の一般化を行い, Hollmann-Xiang(2006)によるアソシエーションスキームがその条件を満たすことを証明した. これにより, 新たな強正則グラフの無限族の存在性を証明した. また, この構成法を利用し, アソシエーションスキームをうまく選べば, アダマール行列を生成するPaley型強正則グラフも構成できる点に注意する. この研究結果は, 須田氏(防衛大学校)との共著論文として国際学術誌に採択された. また, 巡回的な構造を持つpseudo-cyclicアソシエーションスキームを, divisible design graphをrelationにもつアソシエーションスキームに拡大可能であることを証明し, 更なる一般化について継続して研究を行っている. この構成法によりアダマール行列の一般化である直交配列が構成できる点は, 重要な意義がある. また, このアソシエーションスキームの結合として, アダマール行列に関連するデザインが得られる可能性もあり, その決定を行うことも今後の課題である. これらの内容で, スぺクトラルグラフ理論の国内研究集会と中国での国際会議で口頭発表を行った. その他, 組合せ2-デザインの漸近存在性の証明で重要な役割を果たした, Wilson (1974)による有限体上の部分集合に生じる差のcyclotomyへの均等分配に関する定理を, pseudo-cyclicアソシエーションスキームへ拡張し, その上の差集合の漸近存在性を証明した.この研究結果は既に, 梶浦氏(大阪商業大学)との共著の論文として国際学術誌に採択された.
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