研究実績の概要 |
核融合プラズマの主要な研究課題のひとつに、シアー流れの効果の研究がある。例えば、本研究の研究計画で紹介したSugama-Hortonモデルは、プラズマが乱流状態にあるときから、帯状の流れ(帯状流)が支配的なときへの相転移現象を説明するモデルであるが、帯状流がシアー流れの一種である。他方、Hawley他は1995年の論文(Astrophys.J.,440, pp.742-763)において、shearing-periodic境界条件を用いて天体の降着円盤の数値シミュレーションを行った。Shearing-periodic境界条件の下で、せん断流れのあるプラズマ乱流のモデル方程式に対する数学解析の論文は見当たらなかったが、最終年度では、外部からシアー流れが加えられた空間2次元のプラズマを記述するMHD方程式に対して、shearing-periodic境界条件の下で解の存在証明を与える論文を書く研究に着手した。ただし、プラズマ抵抗値と粘性が正の定数の場合を考えた。論文の中では、線形移流方程式に対してshearing-periodic境界条件を課した問題も考え、Uniformly local L2空間におけるエネルギー評価式を導出したが、計算方法はY.Taniuchi, Comm. Math. Phys. 248 (2004), pp.169-186と類似の方法を用いた。しかし、shearing-periodic境界条件の下でエネルギー評価式を得るために、新しくcut off関数を導入した点に新規性がある。現在、論文を投稿する最終チェックを行っており、近々論文を投稿する予定である。 また、前年度には、通常の2次元MHD方程式に対して、電流と抵抗と電場の関係式を与えるオームの式を密度勾配に依存するように拡張したMHD方程式に対して、空間周期境界条件の下で解の存在証明を与える論文を澤村氏と共著の形で投稿したが、論文の査読を無事通過して、学術誌に掲載された。
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