研究課題/領域番号 |
20K03791
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13010:数理物理および物性基礎関連
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
田中 篤司 東京都立大学, 理学研究科, 助教 (20323264)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | アンホロノミー / 新奇な量子ホロノミー / 量子古典対応 / トポロジカルポンプ / 断熱非可積分性 / 微小振動 / 断熱サイクル |
研究開始時の研究の概要 |
かつて、量子古典対応は、量子論の創始者達が、量子論のあるべき姿を探索するための指導原理であった。量子論が確立した現在では、量子古典対応は、古典力学を通じて量子論をより深く理解するための一手法でもある。たとえば、古典系の断熱不変量である古典作用と、量子系の定常状態は密接に対応する。特に、古典可積分系では古典作用の「量子化」から量子定常状態が求まる。本研究では、近年著しく進展した「新奇な量子ホロノミー」の成果を基にして、量子古典対応を再検討する。
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研究実績の概要 |
本課題では、これまで量子系で調べられてきた新奇な量子ホロノミーに対応する古典系での現象を探索している。新奇な量子ホロノミーとは、定常状態にある量子系が断熱サイクルによって最初のものとは異なる定常状態に移行することである。近年、新奇な量子ホロノミーの具体例が数多く見いだされ、その数理的な背景として既存の幾何学的位相の枠組みの拡張が得られた。一方で、新奇な量子ホロノミーの具体例の多くは単純な量子古典対応を許さない。このため、以前は新奇な量子ホロノミーの古典対応物を論じることが可能か否かすら不明瞭であった。これを受け、本課題ではこれまで、古典的な一次元連成振動系への断熱的なピン止め操作を含む断熱サイクルを調べてきた。この結果、基準振動のポンプとして機能する断熱サイクルを見いだした。これは古典完全可積分系における作用変数のホロノミーを引き起こす。 本年度は、作用変数のホロノミーの応用を論じた。まず、その物理的背景から説明するが、トポロジカル絶縁体の端に局在するモード(固有状態)を別の局在状態に輸送する断熱過程はエッジ・エッジポンプとして近年良く調べられている。これに類似する状況を、ピン止め操作を含む断熱サイクルで実現することに成功した。両者の重大な違いは、前者では無限系のトポロジカルな特徴が有限系での局在状態を説明することから、Thoulessポンプのいわば有限系での実装とみなせトポロジカル数で特徴付けられる。一方、ここで得た例では人為的な局在状態をピン止めで形成し、ポンプ自体もトポロジカル数では特徴付けることができない。このような断熱ポンプを幾何学的に特徴付けることは今後の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は専ら作用のホロノミーの応用を線型鎖にて探索した。この結果、既存のトポロジカルな特徴付けでは説明不可能なトポロジカルポンプを見いだすことができた。ただし、ポンプとして機能する断熱経路の特徴付けを得ることは未解決問題として残されている。また、非線形系での具体例が待望されるが、こちらについても進展は無かった。
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今後の研究の推進方策 |
古典フロケ系の一例として、周期的な磁場を印加した荷電粒子系での断熱サイクルを調べたい。ここではプラズマでの Hannay角の研究 (例えば Littlejohn, PRA (1988))を参考にしたい。また、まだ探索的な段階ではあるが、断熱的なピン止め操作下の一次元連成振動系について、基準モードポンプや作用変数のホロノミーの幾何学的な特徴付けを試みたい。ここでは、新奇な量子ホロノミーの被覆空間からの特徴付け (Tanaka and Cheon, PLA (2015))の枠組みが有用だと思われる。
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