研究課題
基盤研究(C)
銀河団中の高温プラズマを銀河団ガスと呼び、X線で観測されてきた。しかし、ガス温度の測定には十分な光子数が必要であり、高い角度分解能で測定できない、複数のガス成分を空間的に分離できない、15keV以上の温度測定が困難である、という原理的な問題を抱えていた。一方、銀河団ガスと宇宙マイクロ波背景放射による逆コンプトン散乱であるSZ効果の観測技術の進歩はめざましく近年グリーンバンク電波望遠鏡のMUSTANG-2によって約10秒の分解能を達成することができた。X線の撮像観測では同様の分解能を達成しており、電波とX線観測のジョイント解析によって、先述した問題を一気に解決し、ガス構造の詳細を明らかにする。
観測的・理論的アプローチの両面から研究を遂行した。観測的アプローチでは、1から3個の球対称ガスモデルを用いてジョイントSZ効果+X線解析を行った。また、弱い重力レンズ質量、光学撮像データなども含めた多波長解析を行った。3つの銀河団に対して解析することにより、衝突タイムスケールに対する銀河団ガスの変化を定量的に評価することができた。理論的アプローチでは、天球面上に衝突している銀河団の数値シミュレーションに対して解析モデルを作成した。銀河団ガス分布を記述するgNFWモデルに衝撃波を記述するランキン-ユゴニオ関係式を導入し、全体のガス分布と局所的な衝撃波の構造を同時に再現することを確認した。
銀河団は宇宙最大の天体であり、その衝突現象はエネルギーを最も開放する。これの詳細な物理の解明は、宇宙の構造形成を理解するのに重要であると同時に、今後の望遠鏡や衛星計画と密接に関係する。特に高角度分解能SZ効果の観測装置の技術進歩は、銀河団ガスの研究に大きな革命を引き起こす。そのため研究の舗装整備は必要不可欠である。また、一連の研究を通して、プレスリリースを行い、社会的還元を行った。
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すべて 国際共同研究 (18件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) 備考 (3件)
Publications of the Astronomical Society of Japan
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https://subarutelescope.org/jp/results/2020/11/12/2910.html
https://greenbankobservatory.org/imaging-of-cluster-collision/
https://www.esa.int/ESA_Multimedia/Images/2020/11/Cosmic_furnace_seen_by_XMM-Newton