研究課題/領域番号 |
20K04022
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分16010:天文学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
森 正夫 筑波大学, 計算科学研究センター, 准教授 (10338585)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | ダークマター / 銀河形成 / 銀河進化 / 数値シミュレーション / 宇宙物理学 / 理論天文学 / 銀河衝突 / 計算科学 |
研究開始時の研究の概要 |
我々の住む銀河はどのように誕生し進化してきたのだろうか。本研究では銀河の形成・進化の研究を通して、宇宙物理学における最大の謎とされているダークマターの性質、及びコールドダークマターモデルの抱える諸問題について詳細に調査する。そのために大規模数値シミュレーションによる銀河光学化学力学進化の精密理論を構築し、高精度観測データと詳細な比較を行う。そして銀河に付随するダークマターハローに対する未解決問題である、“カスプ-コア問題”や“ミッシングサテライト問題”に代表されるコールドダークマターモデルと観測の矛盾を解明する。
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研究実績の概要 |
これまでの研究では、ダークマターハローは中心で質量密度が発散するカスプ状構造を普遍的に持つことが強く示唆されている。一方で、近傍矮小銀河の回転曲線の精密観測では多くの場合ダークマターハローの中心質量密度分布はほぼ一定のコア状構造、もしくは理論予言よりは滑らかな質量密度分布(冪指数)を持つことが知られている。この理論と観測の矛盾は“カスプ-コア問題”として広く知られている。これまでの銀河形成シミュレーションの研究により、超新星等のフィードバックが重力場を変化させ、ダークマターハローの質量分布をカスプ構造からコア構造へ遷移させるという現象論的な理解が積みあがってきた。しかしながら、その遷移を支配する基礎物理過程の理解は、未だ根本的な理解に至っているとはとても言い難い。 カスプ-コア遷移によるダークマターハローのパラメータの変化をモデル化し、これをc-M relation と組み合わせることによって、カスプ-コア遷移後のダークマターハローのパラメータに対する予言を行った。遷移前後で「中心部分のみが変化する」、「総質量は保存される」という仮定のもとカスプ-コア遷移モデルを定式化すると、あるカスププロファイルのパラメータの組み合わせに対して一意に遷移後のコアプロファイルのパラメータの組み合わせを決定できる。このモデルを適用したc-M relation を観測と比較すると、steller feedbackによるエネルギーが重力ポテンシャルより大きくなる1000億太陽質量以下でカスプ-コア遷移後の予言と一致し、それより大きい系で遷移前の予言と一致した。これは、ダークマターハローがCDM モデルの予言通り当初カスププロファイルで形成され、後天的にコアプロファイルに遷移して現在観測されるに至るというシナリオを支持する結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウィルス拡散の社会的状況により、海外研究者との共同研究や国際会議等へのオンサイトでの参加について充分な進展を得る事がこれまで困難であったが、しかしながら、国内の共同研究者との共同研究の密度を上げる事が出来たおかげで、全体として順調に研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
標準的なコールドダークマターモデルを基礎とした銀河形成シナリオでは銀河系ほどの大きさを持った銀河に付随する矮小銀河の総数に関する理論予測が、実際の観測と大きく食い違っている。いわゆる Missing Satellite Problem が未解決問題として指摘されている。この解決案として、観測が不可能なほどに暗いSub-halo(Dark Satellite) の存在が考えられており、先行研究からこの Dark Satellite の存在を観測可能な Bright Satellite との衝突から間接的に示せる可能性が示唆された。これまで、宇宙論的N体シミュレーションや精密位置天文衛星の観測データを最大限活用して、Milky Way サイズの Host 銀河に付随した(Brightと Dark を含む) Sub-halo 同士の二体衝突の頻度を時間進化する系の中で詳細に調べてきたが、今後さらにそのような理論解析を進めた上で、矮小銀河の観測を通してDark Satellite の存在を観測的に見極めていく予定である。
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