研究課題/領域番号 |
20K05312
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分29010:応用物性関連
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研究機関 | 東北大学 (2022) 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 (2020-2021) |
研究代表者 |
岡部 博孝 東北大学, 金属材料研究所, 特任助教 (20406838)
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研究分担者 |
平石 雅俊 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 研究員 (80712653)
西村 昇一郎 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 特別助教 (20836431)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | ミュオン / μSR / 磁気リラクサー / スピン揺らぎ / リラクサー / 水素 / マルチフェロイクス / 非定常 / マルチフェロイック |
研究開始時の研究の概要 |
格子やスピンの時間揺らぎを計測する方法は多々あるが,リラクサー強誘電体のような多数のナノドメインからなる物質の性質を知るには未だ不十分である.このような不均質な系における局所的な電荷揺らぎを計測する方法として,ミュオンスピン回転緩和法(μSR)に着目した.μSRは電場に感度がない純粋な磁気測定法であるが,電荷とスピンの結合が強い系では,磁気モーメントを介して電荷揺らぎを検出できる可能性がある.本研究では,マルチフェロイック物質や磁性強誘電体を対象としてμSR実験を行い,本質的不均質系における電荷ダイナミクスの解明へとつながる局所電荷揺らぎの計測方法を開発する.
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研究実績の概要 |
本年度は合成法を見直し,不純物量を低減した磁気リラクサー強誘電体xBiFeO3-(1-x)BaTiO3(x = 0.5, 0.66, 1.0)について,反強磁性転移温度近傍の磁気揺らぎの観測を行った.いずれの組成も磁気転移は高温領域(500~650 K)にあるため,J-PARC物質生命科学実験施設(MLF)のミュオンS1エリアにおいて,赤外加熱装置を使用した高温μSR実験を行った.磁気転移温度近傍の測定を行った理由は,昨年度に行われた室温以下のμSR実験において,ミュオンの縦緩和率に含まれるスピンと電荷揺らぎによる寄与を見分けることが困難であったためである. 高温μSR実験の結果を解析したところ,極性ナノ領域形成による電荷揺らぎが存在しない(リラクサー的性質を示さない)BiFeO3においても,スピン揺らぎとは別の揺らぎが共存していることが判明した.より詳細な実験と解析を行ったところにより,この揺らぎは高温測定で使用したグラファイト製の試料ホルダによるバックグラウンド信号に加えて,高温であることによって生じた,ミュオンの拡散運動が重複していることが判明した.そこで本年度は,上記ダイナミクスが問題にならないと予想されるBiFeO3の磁気相転移の高温側(常磁性―強誘電相)に集中して臨界現象の解析を行った. BiFeO3の臨界指数γは1.24程度であり,鉄のスピンは3次元イジング的な普遍性クラスに分類されることから,この温度領域におけるミュオンの緩和現象は,スピン揺らぎのみで説明することができることが判明した.これにより,電荷揺らぎが共存すると予想されるリラクサー組成(x=0.5, 0.66)の解析への足がかりをつかむことができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度に明らかになった問題点(測定温度領域,試料品質)については,赤外加熱装置を使用した高温実験および合成条件の見直しによって解決したが,新たな問題(グラファイトのバックグラウンド,高温によるミュオン拡散)が発覚した.これによってリラクサー組成の解析が複雑になり,現時点では非リラクサー組成BiFeO3の解析に留まっている.
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今後の研究の推進方策 |
BiFeO3の解析結果から磁性による信号(スピン揺らぎによる緩和)とミュオンのダイナミクスによる信号を分離するモデルを構築する.また,グラファイトのバックグラウンド信号を適切に処理するため,必要に応じて再実験を行う.これらの情報をもとに,磁気リラクサーにおける電荷揺らぎの影響を評価する.
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