研究課題/領域番号 |
20K05385
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分31010:原子力工学関連
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
羽倉 尚人 東京都市大学, 理工学部, 准教授 (00710419)
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研究分担者 |
渡部 創 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 核燃料・バックエンド研究開発部門 核燃料サイクル工学研究所 環境技術開発センター, 研究主幹 (40446399)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | PIXE / 波長分散型分光システム / 輝点重心処理 / 超解像処理 / 画素ずらし |
研究開始時の研究の概要 |
原子力発電の利用により発生する使用済燃料の再処理技術開発において、分離することが求められる錯体の化学結合状態を把握することを目的の一つとして、イオンビームを用いた微量元素分析法である粒子線励起X線分光(PIXE)分析法のエネルギー分解能を飛躍的に向上させる手法の開発を行う。X線のエネルギーを分光結晶で詳細に測定する手法である波長分散型分光システムに「輝点重心処理」「超解像処理」「画素ずらし」といった画像処理技術を組み合わせた分析システムを開発する。
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研究実績の概要 |
本研究では、イオンビームを用いた高エネルギー分解能の分析手法の構築を目指している。イオンビームをターゲットに照射することで発生する特性X線から含有元素の特定を行う荷電粒子線励起X線分光(Particle Induced X-ray Emission:PIXE)法は高感度の分析が可能であり広く用いられている手法である。このエネルギー分解能を飛躍的に向上させるために分光結晶を導入した波長分散型PIXE(WDS-PIXE)法は、これまでにも研究されているが、本研究の特徴は、CCDイメージセンサーで取得した特性X線の輝点に対し、3つの画像処理技法(重心処理、超解像処理、画素ずらし)を導入するところにある。従来法ではX線を検出するための真空容器を大きくし、X線光源と検出器の距離を大きくとることでエネルギー分解能を高めるという手法がとられていた。本研究では、真空容器全体を小型化し、X線の集光効率を高く確保しつつ、エネルギー分解能の劣化を画像処理技法の導入により従来型と同等に保持することにある。これまでにX線の輝点をCCDイメージセンサーで取得し、画像処理技法が適用可能であることを確認してきた。 2022年度は、製作した真空容器内に分光結晶や検出器を配置するための治具に関する検討を進めるとともに、ビーム試験等を実施した。分析対象とする試料の従来方式でのPIXE測定を実施するなど、WDS-PIXEと比較するための準備を進めてきた。 上記の研究成果は2022年11月(NSS-20-154)のIEEE/NSS/MIC2022、2022年9月(22a-C205-9)と2023年3月(16p-D519-15)の応用物理学会、2023年3月(2E07)の日本原子力学会において報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度には、CCDイメージセンサーを用いた密封放射線源(Fe-55)のX線による輝点を取得すること、そして、得られた輝点が画像処理技法の適用にふさわしい形、すなわち複数画素にまたがった形での分布を示すかどうかを確かめることを目的に実験等を実施し、主要な目的は達成することができた。 2021年度には、イオンビームでの実験を行うための真空チャンバの設計と製作を行った。また、製作したチャンバの基本性能試験を実施することを主な目的とした。装置全体としての小型化を目指して、測定試料・分光結晶・検出器(CCD)の配置を工夫した。通常はビームの高さと同じ高さの水平面上にそれらを配置するが、ここでは、ビームと床面の間に配置するという縦型の配置とした。ここで構築したWDS-PIXEシステムの性能を評価するために、先行研究の測定を再現するような実験も計画している。分光結晶の種類に応じて測定可能なエネルギー範囲が異なるので、新規に製作したチャンバにおいて先行研究の再現をするための構成について検討した。 2022年度には、WDS-PIXEシステムを完成させるべく作業を進めてきたが、真空チャンバ内の各要素の配置検討に思いのほか時間を要し、分光後のX線を検出する実験を完遂させるところまで至らなかった。2023年度中には実験を行い、今後の展開についても具体的に検討していきたいと考えている。 研究成果については、2022年11月に開催された米国電気電子学会主催の国際会議(IEEE/NSS/MIC2021)にて、また、国内では、応用物理学会や日本原子力学会において報告した。また、2023年も同様に国内外の学協会で成果を報告する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度、2021年度の研究成果により、X線の輝点をCCDイメージセンサーにより画像処理技法の適用が可能な形で取得できることが確認されたため、真空容器を製作し、イオンビーム実験に向けた準備を進めることができた。真空実験用チャンバでは、WDS-PIXEの測定に加えて、既存のイオンビーム実験用分析チャンバにて測定していたエネルギー分散型PIXE(EDS-PIXE)や荷電粒子誘起発光分光(IBIL)の測定が同時に行える仕様とした。また、X線の集光効率を極力上げるという観点から、試料とスリット、分光結晶、CCDイメージセンサーの配置を可能な限りコンパクトに設計した。従来型の波長分散型分光PIXEシステムでは、分光結晶とCCDイメージセンサーの距離を極力離すことによりエネルギー分解能を高める工夫をしていたが、画像処理技法の適用によりエネルギー分解能の劣化を防ぐとともに、むしろ向上させる方向にすることが本研究の最大の特徴であり、その特徴の実証をしていく。IBILとの同時測定により、WDS-PIXEとIBILの適用範囲について比較検討し、WDS-PIXEの有効性を明らかにしていくことを計画している。また、同一の試料に対し、EXAFS測定などの別の手法での測定を実施してくことで、多面的にデータを取得し、その点からもWDS-PIXEの有意な点を明確にしていく。2022年度に完成させる予定であったが、真空チャンバ内の各要素の配置検討に時間を要し、計画を変更せざるを得なくなった。2023年度は最終年度として、総合的な試験を計画的に実施し、成果をまとめていく。国内外の学会発表や論文投稿という形で研究成果の社会還元を行っていきたいと考えている。
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