研究課題/領域番号 |
20K05484
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分33010:構造有機化学および物理有機化学関連
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研究機関 | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
研究代表者 |
小泉 俊雄 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 応用科学群, 教授 (60225349)
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研究分担者 |
林 正太郎 高知工科大学, 環境理工学群, 准教授 (00532954)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 交差共役 / デンドラレン / 制御ラジカル重合 / 可逆的付加開裂連鎖移動 / ブロック共重合 / クロスカップリング反応 / 1,3-ジエン / チオール・エン反応 / 高分子反応 / 骨格変換 / 凝集誘起発光 |
研究開始時の研究の概要 |
交差共役系化合物に分類されるジアリール[n]デンドラレン類の物性の予備的な評価の結果、極めて興味深い現象を見出した。通常の共役系構造と同様にデンドラレン類は不飽和炭素のみから形成されているにもかかわらず、共役の拡張はなく、そのため発光機能は有しないと予想される。しかし、我々は固体状態で発光現象を示すことを見出した。本計画では様々なデンドラレン類の合成を行い、物性と構造解析などを行い、交差共役系分子群の新たな可能性を探る。
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研究実績の概要 |
昨年度は、[2]デンドラレン(2,3-ブタジエニレン)骨格を主鎖に有する交差共役型高分子に対してベンジルメルカプタンとのチオール・エン反応の適用を検討し、熱ラジカル開始剤を用いてクロロベンゼン中で加熱することで、良好な収率で主鎖にtrans-スチルベン骨格を7割程度含む共役系高分子への変換に成功した。本年度は、 2,3-ジフェニル[2]デンドラレン(DP2D)の制御ラジカル重合を中心に検討を行った。 昨年度の研究で、可逆的付加開裂連鎖移動法(RAFT)により分子量が制御された目的とするポリマーが得られることがわかった。そこで、生成したポリ(2,3-ジフェニル[2]デンドラレン)をマクロモノマーとするブロック共重合体の合成を試みた。その結果、スチレンとの重合で分子量の制御されたブロック共重合体の合成に成功した。一方でメチルメタクリル酸メチル(MMA)とのブロック共重合は進行しなかったが、MMAをマクロモノマーとするDP2Dとの重合は狭い分子量分布を保持したまま進行した。さらに、DP2Dのフェニル基の4位に置換基を有するモノマーへのRAFTの適用を試みた。メトキシ基は置換基として適さなかったが、重合条件をさらに工夫することによってメチル基やクロロ基を有する[2]デンドラレンからポリマーを得ることに成功した。 2,3-ジアリール[2]デンドラレン類の合成検討の過程で、ある種の炭酸プロパルギルエステルから収率は低いながらこれまで合成が困難であった1,3-ジエン骨格の2位にエーテル結合をもつ共役ジエンが生成することを見出していた。そこで、反応条件を詳細に検討した結果、ベンジルアルコール類を20当量用いることによってパラジウム触媒存在下で収率良く共役ジエンを合成することに成功した。また、フェニル基上の電子供与性の置換基を有するベンジルアルコール類を用いた方が目的物の収率が高い傾向にあった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画調書では、令和4年度が最終年度であった。当初の計画では、2,3-ジアリール[2]デンドラレン(2,3-ジアリール-1,3-ブタジエン)の合成と光物性評価、並びに凝集誘起発光の評価が含まれていた。しかし、本計画の開始初年度からのコロナ禍の影響のため、より準備が整っていたチオール・エン反応の検討に着手した。また、2,3-ジアリール[2]デンドラレンの反応の一環として、制御ラジカル重合に挑戦した。これらの研究は、研究計画調書の「本研究がうまく進まない時の対応」に記載している2,3-ジアリール[2]デンドラレンの反応性の検討に該当する。 令和2年度および3年度は、新型コロナの感染拡大に伴う学内の各種制限下の中にあっても成果をある程度出すことができ、研究は「おおむね順調に進展している」とした。令和4年度は、前年度に比べて学内の各種の制限は緩和されたものの、通常と比較すると実験量はやや減少し、2年度および3年度の若干の遅れを挽回するには至らなかった。その結果、3年間の中で新型コロナに起因する多少の遅れが積み重なり、研究期間の1年延長ということになった。4年度は、2,3-ジフェニル[2]デンドラレンを交差共役系モノマーとして用いた制御ラジカル重合の研究でブロック共重合体の合成に成功した。さらに、フェニル基上に置換基を有する2,3-ジアリール[2]デンドラレンの制御ラジカル重合を検討し、置換基によって重合挙動がことなること、重合条件を適切に選択することで目的のポリマーが得られることなど、重要な成果をあげることができた。 以上、令和4年度についても新規かつ進展性のある成果が得られ、おおむね順調に研究が進んでいると判断できるが、全研究期間を通じて新型コロナにより研究の遅れが蓄積し、次年度も引き続き計画調書記載の研究を継続することとした。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、まず前年度の結果を踏まえ、2,3-ジフェニル[2]デンドラレンの制御ラジカル重合の検討を実施する予定である。2,3-ジフェニル[2]デンドラレンのラジカル重合は、1,3-ブタジエンと同様に主に1,4重合により主鎖にアルケン骨格をもつ高分子を与えることを明らかにした。生成高分子の構造は興味深い。水素化により主鎖二重結合を還元するとhead-to-head型のポリスチレンに変換できる。また、脱水素化が行えれば、共役系高分子であるhead-to-head型のポリフェニルアセチレンへと変換できる。いずれもスチレンモノマーの重合では合成が困難な高分子である。そのため、head-to-head型ポリスチレンおよびhead-to-head型ポリフェニルアセチレンの各種物性に関する情報はほぼない。 我々は、炭酸プロパルギルエステルを用いたパラジウム触媒反応の検討の中で2,3-ジアリール[2]デンドラレン類を高収率で合成する手法を開発し、[2]デンドラレン骨格を有する交差共役型高分子の合成に成功した。この炭酸プロパルギルエステルを用いたパラジウム触媒反応の検討過程で1,3-ブタジエンの2位にエーテル結合を有する共役ジエンが生成するという有益な結果を得た。通常の方法では合成困難なエノール骨格を有するジエンが得られたことから、収率の向上や基質の適用範囲を含めてさらに検討を進める予定である。 当初計画である、2,3-ジアリール[2]デンドラレン(2,3-ジアリール-1,3-ブタジエン)の合成と光物性評価ならびに凝集誘起発光の発現に関する考察などについても可能な限り検討していく。
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