研究課題
基盤研究(C)
申請者らは、植物の乳管細胞と呼ばれる防御に特化した細胞で高蓄積するPLATタンパク質が、抗昆虫活性を有し、そのアラビドプシスホモログの一つも強い殺虫活性を有することを発見した。本研究では、より強い活性を有するホモログの探索と殺虫性機構の理解を図る。この研究をパイロットスタディとして、乳管細胞オミックスを通じて見出した多数の機能未知タンパク質の抗昆虫あるいは抗微生物活性とその機構も解析する。これを緒として、多くの植物のゲノム中にコードされる機能未知タンパク質遺伝子のいくつかが生体防御を司る抗昆虫・抗微生物タンパク質であることを示す。
昆虫と微生物に対する植物の防御システムは多種多様で、解読された多くの植物のゲノム中にも未知の抗昆虫・抗微生物タンパク質遺伝子が多く存在すると思われる。防御に特化した細胞である乳管細胞は、それらの発見を促す強力な研究材料である。イチジクとミドリサンゴの乳管で高発現する機能未知の転写物・タンパク質より約20種を選び、一過的発現系を用いて害虫ハスモンヨトウに対する抗昆虫活性を示す複数の新奇なタンパク質を見出した。組換えタンパク質とトランスクリプトーム解析等を通じてそれらの抗昆虫の分子機構を提案した。
防御機能に特化した乳管細胞を足掛かりにして新奇な抗昆虫タンパク質遺伝子を発見するという独自のアイディアに基づき複数の新奇な抗昆虫タンパク質を発見した。本成果は、植物と昆虫の異種生物間相互作用、植物の生体防御機構の多様性の理解という植物科学の大きな興味に新しい知見を提供した。この成果を可能にした技術的要因のひとつは、簡単迅速低コスト省スペースで複数遺伝子の並行解析に適した一過的発現系を独自に開発したことにある。本技術は、タンパク質・遺伝子の機能解析を試みる多くの研究にも応用可能である。本研究が発見した抗昆虫タンパク質遺伝子は、化学農薬不要の環境と消費者に優しい農業の実現に応用可能である。
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Planta
巻: 253 号: 2 ページ: 0-0
10.1007/s00425-020-03530-y