研究課題/領域番号 |
20K05928
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38050:食品科学関連
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
侯 徳興 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 教授 (90305160)
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研究分担者 |
坂尾 こず枝 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 助教 (40713285)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | アントシアニン / アントシアニン代謝産物 / 非アルコール性脂肪肝 / 脂質異常症 / 腸内細菌叢 / 酸化損傷 / 脂質異常 / 炎症 / 相互作用検討 / 機能性解明 |
研究開始時の研究の概要 |
アントシアニンは、多彩な機能が知られている一方、生体への移行率は極めて低いと報告されてきた。アントシアニンの低生体利用率と高機能性は矛盾しており、いわゆるアントシアニンパラドックスな状況になっている。本研究はそのパラドックスを解明するために、腸内細菌叢を標的にし、①腸内細菌によるアントシアニンの分解及びその分解産物の機能、②アントシアニンによる腸内細菌叢及び腸粘膜等の腸内環境状況への影響、という相互作用について、動物実験を用いた代謝産物のメタボローム解析や腸内細菌叢の16S RNA解析によって明らかにする。
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研究実績の概要 |
アントシアニンは胃・小腸での吸収率は極めて低く、生体での機能性を説明できない。本研究はアントシアニンと腸内細菌との相互作用を解析すると共に生じた生理機能を明らかにし、アントシアニンの低生体利用率と高機能性の矛盾を解明する。 初年度はアントシアニンの腸内細菌叢への影響を明らかにするため、ブルーベリーアントシアニン抽出物(BA)を研究材料に用いた。動物実験は鹿児島大学における動物実験に関する規則に従い実施した。異なる食事状態を模擬するため、5 週齢のマウスに標準食(ND)及び過剰栄養食(WD)を設定し、その上にそれぞれBAを添加し3か月間飼育した。その結果、アントシアニンはWDでもたらした脂質代謝異常・肝機能障害・酸化ストレス及び腸細菌叢の乱れ等を改善した。 3年目はこれらの効果の作用機構を明らかにするため、BA、その主要な代謝産物PGA及びPCAをそれぞれの比例でWDに添加し、同様に3か月間飼育した。その結果、PGAやPCAは、WDでもたらした脂質代謝異常・肝機能障害・酸化ストレスを同様に改善したが、腸内細菌叢に対してはBAが特定の腸内細菌を影響することに対して、PGAやPCAは腸内細菌叢の菌間ネットワークを変化させることで腸内環境を改善することが明らかになった。 3年目は動物実験で菌数比が大きく変化が見られた腸内細菌に対して、体外培養でその効果を直接解析した。BA、PGAやPCAはこれらの腸内細菌を直接的に増殖させず、胆汁酸ストレス下で培養すると、抑制された腸内細菌の増殖を回復させ、動物実験と同じ傾向を示した。従って、アントシアニンは主に大腸内に到達しPCAやPGA等へ分解され、腸内細菌A.muchiniphila、B.acidifaciensやParabacteroides等に作用し、過剰栄養による脂質代謝異常・肝機能障害・酸化ストレス等を改善することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度はアントシアニンの生体調節機能と腸内細菌叢への影響を明らかにするため、15種類アントシアニンを含むブルーベリーアントシアニン抽出物(BA)を用いて動物実験を行った。その結果、アントシアニンはWDでもたらした脂質代謝異常・肝機能障害・酸化ストレス及び腸細菌叢の乱れ等を改善した。データをまとめて1報目の論文としてNutrients (2020年12月、IF=4.196)に発表した。 2年目はアントシアニンの代謝産物を解析し、主要な代謝産物はphloroglucinolcarboxaldehyde(PGA)及びprotocatechuic acid (PCA)であることを明らかにし、これらの代謝産物を用いて再度動物実験を行った。その結果、PGAやPCAは、WDでもたらした脂質代謝異常・肝機能障害・酸化ストレスを同様に改善したが、腸内細菌叢に対してはBAが特定の腸内細菌を影響することに対して、PGAやPCAは腸内細菌叢の菌間ネットワークを変化させることで腸内環境を改善することが明らかになった。 3年目、腸内細菌体外嫌気培養の手法を導入し、アントシアニン及びその主要な代謝産物PGAやPCAを直接的にこれらの腸内細菌培地に添加し、その効果を明らかにした。さらに、アントシアニン及びその主要な代謝産物PGAやPCAの腸内細菌叢調整及び脂質異常症予防に対する作用を比較研究した。アントシアニンの低生体利用率と高機能性の矛盾解明に資する総合的な知見が得られた。現在はそれらの結果をまとめ、国際食品専門英文誌に投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、アントシアニンと腸内細菌との相互作用を解析し、さらに、それにより生じた生理機能を明らかにした。その成果は2023年5月の食品関連の国際会議で招待演者として口頭発表する予定である。また、本研究の後半部分の結果をまとめ、2報目の論文として国際食品専門英文誌に投稿しており、審査結果により論文修正や追加実験等を対応していく。 今後は本研究で得られたアントシアニン代謝生理学の新しい知見を活かし、アントシアニン食材を一層活用し、健康食生活の実装社会に繋がっていきたいと思う。
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