研究課題/領域番号 |
20K05996
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39020:作物生産科学関連
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
萩原 素之 信州大学, 学術研究院農学系, 教授 (90172840)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | ダイズ / 種子冠水抵抗性 / 発芽生長 / 選抜指標 / 粒の外観 / 発芽 / 冠水条件 / 品種間差 / 種子含水率 / 種皮 / ポリフェノール / 撥水性 / 冠水 / 吸水 / 種皮外観 / 濁度 / 種子 / 抵抗性 / 評価指標 |
研究開始時の研究の概要 |
ダイズは日本の伝統食品の原料であり、世界的和食ブームで需要増加しているが、その自給率は低い。主因に播種後の梅雨の多雨で発芽と初期生長が不良となり減収する種子冠水害があり、海外でも問題となっている。 種子冠水害抵抗性の品種開発には種子吸水特性の評価が重要だが、品種開発に結びつく効率的方法は未確立である。そこで、1) 種子への水浸透の簡便な評価、2) 冠水害の新規評価法として、冠水条件で発芽した幼植物葉の光合成機能の評価,3) 接触角計での種皮の透水性の超迅速評価を行う。これらと冠水条件での発芽試験の相関を確認し、発芽試験を省略または簡素化した迅速・容易で効率的・実用的な抵抗性評価法を確立する。
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研究実績の概要 |
吸水中断種子の吸水量(A)と吸水中断後に与えた種子の乾燥処理による種子からの蒸発量(E)を測定し、E/Aを求めると種子冠水抵抗性の指標として有用であるとの研究成果を蓄積してきたが、この調査に当たっては、種皮に傷やシワのない整粒を選別して用いていた。E/Aの測定は冠水条件での発芽試験より効率的に種子冠水抵抗性を評価できる方法であるが、それでも実用的に利用する場合は非常に多数の品種・系統を扱う必要があるため、種子選別に要する手間と時間を解決する必要がある。 本年度はE/Aの測定に当たり、事前の種子選別の省略の可能性を検討した。このため、粒大と種皮色の異なる14品種を供試して、整粒(傷等のない粒)、傷粒、シワ粒に分けてE/Aを測定するとともに、冠水処理した種子の土壌条件での発芽試験を行った。 その結果、14品種中13品種で、整粒のE/Aとシワ粒のE/Aには有意差が認められず、両者の間には有意な正の相関関係が認められた。一方、傷粒のE/Aは、整粒のE/Aと有意差が見られない品種もあったが、小粒品種では有意に小さく、両者の間の相関関係は有意ではなかった。発芽試験において、整粒とシワ粒に有意差は認められなかったが、発芽生長は14品種中1品種では傷粒が整粒を有意に下回った。発芽生長の調査項目の多くにおいて、整粒とシワ粒では有意な正の相関が見られたのに対し、整粒と傷粒では有意な相関は見られなかった。 以上のことから、種子冠水抵抗性の評価指標としてE/Aを利用する場合、E/Aの測定前に傷粒は選別除外すべきであるが、シワ粒は除外しなくてもE/Aによる種子冠水抵抗性の評価に大きな影響を与えないと判断された。ただし、傷粒の割合が低い場合には選別除外は不要かも知れない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1)E/Aの種子冠水抵抗性評価指標としての確立 E/Aを効率的な選抜指標として利用するための基礎的知見は、2022年度までで大凡固めることができ、E/Aを実用的に利用できるようにする研究計画は、当初の予定が概ね順調に進展した。ただし、論文発表の準備が遅れている。 2)E/Aと組み合わせて使える種子冠水抵抗性の簡易・迅速評価指標の開発 本研究では、E/Aと組み合わせて利用することにより、優れた品種・系統の選抜効率を向上を図れるようにするために、もう一つの冠水抵抗性の評価指標の確立を目指している。当初は種皮の撥水性が簡便な評価指標になると期待したが、種子冠水抵抗性との関連性が充分に高くないと判断されたため、新たな評価指標を模索し、種子浸漬液の濁度が有望であるとの結果を前年に得た。しかし、これに関してデータ収集が2022年度には進まず、計画より大きく遅れた。研究を一段進展させるためには、種子浸漬液の濁度が種子浸漬液中の微生物増殖を示しているとの仮説をより直接的かつ効率的な方法で検証する必要があり、その手法の検討に時間を要したためである。 3)種子冠水抵抗性を高める手法 上記のテーマに関連する応用的研究テーマとして2021年度に追加した、種子冠水抵抗性を高める実験的方法については2022年度に追加のデータ収集を行い、冠水条件での発芽を改善する効果を確認し、確実な前進があった。このテーマは、黒ダイズの冠水抵抗性が概して高いことの理由の解明にも通じる。このテーマに関する成果についても論文構想にまだ着手できておらず、準備が遅れている。 以上、2つの種子冠水抵抗性評価指標を確立するとの計画は65%程度の進捗であるが、当初計画していなかった3)のテーマでの進捗が見られるため、全体としては80%程度の進捗である。
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今後の研究の推進方策 |
1)E/Aの種子冠水抵抗性評価指標としての確立 所期の目的をほぼ達成できているが、小粒種子でE/Aが大きい(種子冠水抵抗性が高い)理由について種子構造の面から検討する。また、同一品種で粒大が異なる場合のE/Aの値の違いについての予備調査データを踏まえつつ、種子を小粒化した場合のE/Aと冠水条件下での発芽性の関係を調査する。 2)E/Aと組み合わせて使える種子冠水抵抗性の簡易・迅速評価指標の開発 種子浸漬液中の微生物(バクテリア)増殖を直接的・効率的に調査するため、セルソーターを利用する。セルソーターで浸漬液中の微生物数をカウントしたデータと測定容易な濁度のデータを収集し、種子冠水抵抗性との関連例を明らかにして、種子浸漬液の濁度を種子冠水抵抗性評価指標として確立する。 3)種子冠水抵抗性を高める手法 1)と2)のテーマの達成により種子冠水抵抗性品種を効率的に選抜する技術を確立した上で、種子冠水抵抗性を高めるための種子処理法を確立できれば、生産現場への貢献は大きいため、本テーマは本研究の当初目標と方向性が異なるがエフォートをつぎ込む。 黒ダイズ品種は概して種子冠水抵抗性が高い。この理由として種皮中のポリフェノール類に注目する。種皮成分が種子浸漬液での微生物増殖に与える影響をセルソーターおよび濁度により調査する。種皮中のどのポリフェノール成分が微生物増殖の抑制、ひいては種子冠水抵抗性の向上に有効か絞り込む調査を継続し、黒ダイズであっても種子冠水抵抗性に差異がある理由を種皮成分の面から検討する。種皮成分の添加による冠水条件下での発芽改善を水浸漬条件下での発芽では認めていたが、本年は土壌中発芽条件での再現を目指す。
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