研究課題/領域番号 |
20K06125
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40010:森林科学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
正岡 直也 京都大学, 農学研究科, 助教 (90786568)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | 水みち / 飽和透水係数 / 水分特性曲線 / ゲルフパーミアメータ / T-TDRセンサー / 基岩面地形 / 強風化基岩 / 圧力水頭 / 集水性 / 降雨流出過程 / 地形解析 / テンシオメータ / 流出モデル |
研究開始時の研究の概要 |
山地斜面土層内の「水みちによる排水構造」の有無は、洪水流出応答や斜面安定性を劇的に変える要素である。しかし存在を特定するには長期的な土層内の水流観測が必要であり、間接的な予測方法はなかった。本研究では第一に、これまで前例のない流域全体での土層内水流観測を実施し水みちの空間分布特性を明らかにする。第二に集水面積・傾斜や土層厚といった地形情報との関係性を解析し、水みち分布エリアの予測手法を開発する。さらに既存の分布型流出モデルにこれらの知見を組み込み、未観測流域へ適用可能な新しい流出予測モデルを提案する。
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研究実績の概要 |
本年度は第一に、昨年度に測量と土層厚測定を行った滋賀県甲賀市信楽水文試験地内のSB流域(0.28 ha)において、ゲルフパーミアメータ法による土壌透水性の計測ならびにテンシオメータによる圧力水頭の経時観測を実施した。斜面土壌の飽和透水係数Ksの分布に着目すると、斜面上部では土壌深部ほどKsが小さい傾向がみられた一方、下部では深部の基岩面上でもKsが大きい特徴がみられた。これは斜面下部において雨水を素早く排水する水みちが発達していることを示唆していた。さらに同地点において圧力水頭の降雨応答をみると、降雨ピーク時には上昇して飽和に達するものの、降雨終了後は速やかに下降し不飽和に戻っていた。これは水みちの排水効果を裏付けるものと考えられる。降雨が多く集まる斜面下部では土層内に水みちが発達することで、崩壊危険度を低下させているメカニズムの存在が示唆された。ただし、現段階では土壌の保水・透水性パラメータのうち飽和透水係数のみの検討に留まっているため、次の段階として保水性を原位置観測することが必要である。 第二に、土壌の保水性を表す水分特性曲線(θ-ψ曲線)を原位置土壌で観測するためのTDR土壌水分計付きテンシオメータ(T-TDRセンサー)を開発した。これはテンシオメータ先端のポーラスカップにTDR土壌水分計のワイヤをコイル状に巻き付けた構造をしており、体積含水率θと圧力水頭ψを完全な同位置で同時測定することができる。既往研究で提案された同様の測器を改良し、ケーブル類をテンシオメータの塩ビ管に埋め込むことで野外土壌への挿入に耐えうる強度を実現した。制作したT-TDRセンサーに対し実験室内でキャリブレーション実験を行い、土壌の種類を問わず正確な測定ができることが示された。また京都大学構内の野外土壌で経時観測を行ったところ、θ-ψ曲線が良好に測定できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は野外観測を段階的に再開できたため、観測流域でのゲルフパーミアメータ法による透水性の計測やテンシオメータによる圧力水頭の経時観測を行うことができた。しかし、昨年度までの進行の遅れから、当初予定していた流域内における観測地点の全点における透水性の計測は完了していない。また、水みちの検証のためには透水性だけでなく保水性の原位置計測が必要との発想に至り、新たにT-TDRセンサーの開発を行った。開発は順調に進み実用レベルに達したものの、観測流域への適用にはもう一年が必要である。これらの理由から実施期間の一年延長を決定した。進捗状況はやや遅れているが、最終年度で完了できる見込みは立っている。
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今後の研究の推進方策 |
進行の遅れている観測を早い段階から進めていく。具体的に、SB流域においてゲルフパーミアメータによる基岩面上の飽和透水係数の計測を全観測点で実施した後、水みちの存在が推察された測線とされなかった測線にT-TDRセンサーを設置し、θ-ψ曲線を比較する。これにより、土壌洗脱によって保水力の低下が起こっているという仮説を検証する。さらに流域末端の流量と比較し、降雨時に水みちによる素早い流出の寄与がどの程度含まれているかを把握する。得られる結果について、これまでに蓄積された成果と併せて学会発表し論文化を進める。さらに、観測流域の数値地形データ(1mメッシュ)をもとに地形解析を行い、各種の地形量と水みち分布を比較して、水みち予測モデルの検討と最終的な分布型流出予測モデルの構築を行う。
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