研究課題/領域番号 |
20K06491
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43010:分子生物学関連
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
林 紗千子 兵庫県立大学, 理学研究科, 特任助教 (40791869)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | tRNA / イントロン / リボソーム / 翻訳 / 酵母 |
研究開始時の研究の概要 |
イントロンを含む前駆体tRNA(Intron-containing tRNA; 以後、Ic-tRNA)は古細菌から真核生物に広く存在し、恒常的に発現している。しかし、その機能的役割はよく解っていない。tRNAイントロン欠失株を用いた表現型解析により、tRNAイントロンの有無は合成されるtRNA自身の機能性だけでなく、リボソーム機能にも影響を与え得ることが見出された。本研究では、tRNAイントロン欠失株で産生されるtRNAやリボソームの機能面への影響、それに伴うリボソーム関連品質管理機構への影響を検討し、Ic-tRNAが支える翻訳周りを中心とした細胞内環境の維持・制御機構の解明を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究ではtRNA遺伝子に存在するイントロンの生物学的意義を、翻訳装置であるリボソームの質的制御の観点から、出芽酵母のtRNAイントロン欠失株を用い、解析している。これまでの研究成果より、全てのtRNA-Leu(CAA)遺伝子(同義遺伝子が10個存在)からイントロンを欠失させたtL(CAA)Δint株(TYSC2148)では、正電荷のアミノ酸であるArgまたはLysのコドンリピートを含む翻訳において、本来生じるはずのリボソーム停滞に対する緩和効果が示されていた。実際、リボソームプロファイリング等での解析からもtL(CAA)Δint株でのP/E部位におけるArg(CGA)コドンのコドン占有率の低下が示された。一方、本研究課題を進める中で、10個の同義遺伝子の一つであるtL(CAA)N遺伝子からのイントロン削除に伴い挿入されたマーカー配列により、TYSC2148株では隣接するRPS7遺伝子の発現に影響を与えていることが判った。そこで該当マーカー配列を完全に除去、野生型配列に戻した株(SHSC0416)を構築し、再解析を進めた結果、以前のtL(CAA)Δint株(TYSC2148)が示していた40Sリボソーム量の低下の表現型は消失、一方、特定の翻訳阻害剤に対する感受性やArg・Lysのコドンリピートを含む翻訳への影響は保持され、新たにミトコンドリアに関連した表現型が生じること等が判った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マーカー配列挿入を持つTYSC2148株のtL(CAA)NΔint遺伝子座下流の遺伝子間領域を、完全な野生型配列に戻したtL(CAA)Δint株(SHSC0416)での再解析を行い、従来のTYSC2148株で確認していたパロモマイシン感受性とハイグロマイシン非感受性の差異や、新生ペプチド鎖とリボソームの電荷的相互作用によりリボソーム停滞が誘引されるArgやLysコドンの繰り返しを含む翻訳における翻訳異常等を確認できた。よって、tL(CAA)Δint株ではマーカー配列の有無に関わらず、特定のrRNAの修飾・構造的状態への影響も含め、産生されるリボソームに質的変化が生じ、翻訳に影響を与えている可能性が引き続き示唆される。またTYSC2148株で見つかったRPS7Bの発現変化に関する解析より、RPS7パラログ遺伝子間での発現調節機構の存在を見出した(投稿論文準備中)。現在は、これまでのtRNAイントロンの有無によるリボソーム合成への影響だけでなく、特定のリボソームタンパク質との関連についても検討を始めている。
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今後の研究の推進方策 |
tRNA-Leu(CAA)には、イントロン依存的な塩基修飾としてアンチコドンの一塩基目に当たるC34位にTrm4pによるメチル化修飾が入ることが知られる。そこでtRNAイントロン欠失により、このC34位の修飾がどのように変化するか、質量分析法などにより解析する。共同研究先に送るためのtRNAサンプル調製までを行い、野生型、tl(caa)Δint株、trm4Δ株の3株よりtRNA-Leu(CAA)をChaplet column chromatographyにより精製する予定である。一方、18S rRNA h44の修飾状態に関しても、該当部位の2-O-メチル化の有無をPrimer Extension法により解析することを試みる。さらに、新たに構築したSHSC0416株ではmDNAにコードされるタンパク質の発現低下が生じた。tRNAイントロンの欠失に伴うリボソームの質的変化により、細胞質で翻訳されミトコンドリアへと輸送される因子にも変化が生じている可能性を考え、今後、生化学的手法を中心に詳細解析を進める。
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