研究課題/領域番号 |
20K06863
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分46010:神経科学一般関連
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
石橋 智子 東京薬科大学, 薬学部, 助教 (50453808)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 小脳プルキンエ細胞軸索 / パラノーダルジャンクション / ミエリン / カルシウム恒常性維持 / プルキンエ細胞軸索 / 髄鞘 / IP3R1 |
研究開始時の研究の概要 |
脊椎動物進化過程に出現する髄鞘は、軸索を絶縁し跳躍伝導を引き起こす。髄鞘膜は軸索に単純に巻き付くだけではなく、自らを等間隔に軸索表面に繋ぎ止めるため、ランビエ絞輪両隣パラノード部位でparanodal axoglial junction(AGJ)を形成する。AGJに存在する様々な接着分子の欠損マウスの研究よりAGJ形成メカニズムが解明されている。しかしながら軸索カルシウム恒常性維持におけるAGJの役割は未だ明らかではない。軸索全域に存在する異種細胞間結合部位AGJが、局所環境を正常に保ち軸索機能制御の中心的役割を担うのではないかと考え、その制御機構を明らかにするために本研究を行う。
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研究実績の概要 |
脊椎動物の神経軸索の多くは生後軸索周囲に髄鞘が形成されることにより、ランビエ絞輪から絞輪へと跳躍伝導が可能になる。このランビエ絞輪部両隣には髄鞘と軸索を繋ぎ止める膜間結合paranodal axoglial junction (AGJ) がある。AGJ形成には軸索側の細胞接着分子Casprおよびcontactin、髄鞘側のNeurofascin-155が必須であり、AGJ形成後に電位依存性Na+チャネルはランビエ絞輪に電位依存性K+チャネルはjuxtaparanodeへ集積しクラスターを形成する。すなわちAGJは軸索表面のチャネルの局在変化・維持に必須の障壁である。しかしながらAGJのわずかな異常が軸索変性を引き起こすことからAGJは軸索機能維持に極めて重要な構造であると考えられるが、その詳細なメカニズムは明らかではない。 これまでにAGJ形成不全マウスの小脳プルキンエ細胞軸索に限局した腫脹が認められること、軸索腫脹の引き金が小胞体に存在するカルシウムチャネルであるIP3R1の過剰な集積である可能性を明らかにした。IP3R1陽性の軸索腫脹部位にはIP3R1以外にもカルシウム恒常性に関与する分子VDAC、Mitofusion2、SigmaR1などの集積もあり軸索局所のカルシウム恒常性の破綻が示唆された。またこれら分子の集積はIP3R1の発現量に依存していることをin vivoおよびin vitroの系を用いて明らかにした。さらにカルシウム活性化K+チャネルであるIK1およびSlo1の軸索腫脹部への集積も見出した。またAGJ異常プルキンエ細胞の樹状突起の骨格タンパク質であるMAP2の局在も変化していた。これらの結果はAGJ形成がプルキンエ細胞軸索のIP3R1の局在のみならず樹状突起の構造維持にも重要な部位であることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1)In vitroミエリン培養のためのCST欠損マウスの確保の問題 本研究遂行するにあたり、生後0日および胎生13日目のCST欠損マウス(ホモあるいはヘテロ)を使用する必要がある。当然予測数を考えて交配を行なっているが、複数回実験を行うための十分な数の欠損マウスを得ることができなかった。2023年度は再度計画を立てて追試実験を行う予定である。 2)AGJ形成に伴う軸索輸送変化に着目した実験では、軸索ミトコンドリアアンカリングタンパク質であるシンタフィリンの局在解析より、軸索のみならず樹状突起の影響を見出した。当初計画していなかったAGJ形成異常における樹状突起の状態を詳細に調べることは、プルキンエ細胞におけるAGJの重要性をさらに裏付ける所見になると考えている。しかしながら軸索輸送に関する実験は当初予定していなかったため必要なプラスミドDNA調整及びタンパク調整などのため遅れている。 3)本年度はAGJと小脳プルキンエ細胞軸索腫脹に関する総説を出版することができたが、原著論文は投稿できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
1)昨年に引き続き、AGJ形成不全を呈するCST欠損マウス小脳を用いたin vitroの培養細胞を用いて軸索変化および樹状突起の変化を調べる。これまでの培養方法に加え、AXIS axon isolationデバイスを使用し軸索走行と樹状突起の状態を分けて観察しやすくする。この培養方法では少量の細胞で実験することができるため、欠損マウス数に限りがある場合も結果が得られると考えている。 2)軸索輸送に関して これまでにCST欠損マウス小脳を用いた培養系で軸索腫脹を確認しているが細胞数に限りがあり不十分であった。上記(1)の方法で培養を行うことにより少量の細胞でかつ同一方向に軸索を伸長させることができる。この培養細胞にシンタフィリン、IP3R1のプラスミドDNAをトランスフェクションし、ミエリンの状態にともなう軸索の形態変化を詳細に観察する。 3)AGJ形成不全が樹状突起にどのような変化を引き起こすのか詳細に調べるために電子顕微鏡での微細構造の観察を行う。CST欠損マウス、CST欠損/IP3R1欠損マウス、及び正常マウスを灌流固定後、樹脂包埋し電子顕微鏡用サンプルを作成する。この際に軸索腫脹の認められる同一プルキンエ細胞の樹状突起を観察する必要がある。そのために同時に光学顕微鏡で観察し目的箇所を同定してから行う。
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