研究課題/領域番号 |
20K07252
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分48010:解剖学関連
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
辰巳 徳史 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (60514528)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 副甲状腺 / 主細胞 / 副細胞 / Gcm2 / シングルセルトランスクリプトーム / 細胞増殖 / 機能維持 / parathyroids / 組織構築 / 恒常性の維持 / 副甲状腺細胞 / 血管 / PTH / カルシウム代謝 / 1細胞トランスクリプトーム |
研究開始時の研究の概要 |
これまでの副甲状腺細胞の研究は、血中カルシウム濃度の調節機能に関わる内分泌学的研究か、副甲状腺の器官発生に関わる研究がほとんどであり、発生後の副甲状腺細胞の維持に関わる包括的な研究は皆無であった。そのため人で見られる副甲状腺異常の解明は困難である。そこで、成獣マウスの副甲状腺を解析し機能的な内分泌器官がどのように生涯に渡って維持されていくのか解明を目指す。 本研究では副甲状腺のすべての細胞を1細胞ずつ解析を行うことで、発生後の副甲状腺細胞にどのような種類が存在し、またその中で機能維持を果たす細胞(parathyroid maintaining cells;PMCs)の同定と機能を明らかにする。
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研究実績の概要 |
前年度検討していたGcm2-EGFPマウス副甲状腺の細胞調整法が確立し、5月末にシングルセルトランスクリプトーム解析を実行した。その結果を7月末に得ることができた。6000細胞のシークエンスを予定し、合わせて5902細胞のシークエンスを行うことができた。それら細胞は14の細胞クラスターに分類された。解析にはEGFPをマーカーとして検出できるようにしており、14のうち2つのクラスターでEGFPの発現が認められた。その2つのクラスターの細胞では副甲状腺細胞で特異的なGcm2やCasr、VDRの発現を認めた。副甲状腺細胞以外には胸腺や甲状腺、白血球系、血管内皮などの特徴を示す細胞が認められた。副甲状腺細胞の割合は2つのクラスターを合わせて22%だった。胸腺や白血球系の細胞が認められたのは、正常な副甲状腺の中に胸腺と癒合した組織が存在することが、組織学的な解析から明らかになっており、集めた副甲状腺の中にそのような胸腺を含むような副甲状腺が存在したと考えられた。副甲状腺細胞と思われる2つのクラスターで特異的に発現する遺伝子を解析し、Pthを強く発現する集団とほとんど発現しない集団に分けることができた。その他ミトコンドリアの遺伝子の発現量の違いなどから、2つのクラスターは副甲状腺細胞の機能的な主細胞とミトコンドリアリッチな副細胞であることが推察された。この2つのクラスターを更に細分化して解析すると5つのクラスターに分類することができた。それぞれの割合は約20%ずつであった。5つのクラスターのうち増殖マーカー遺伝子の発現を示すものは主細胞の集団であり、その中に特に様々な遺伝子の発現が多い活性の高い細胞集団が存在することが明らかとなった。この細胞は本研究で探索しているPMCである可能性が強く示唆された(第45回日本分子生物学会年会、第128回日本解剖学会総会・全国学術集会にて発表)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、新型コロナの影響を受けての遅延があり、また、副甲状腺細胞をシングルセルにする方法の検証に時間がかかったことなどから、半年-1年の遅れが生じていたが、本年度は副甲状腺のシングルセルトランスクリプトームの解析を行い結果を得ることができた。その解析の結果は良好で、主細胞、酸好性細胞の集団を明確に分離でき、さらにその詳細な解析ではPMCに該当するような細胞集団が存在する可能性を明らかした。このことから、本年度は研究計画の中心的な実験を実行できたと言える。 PMC特異的なマーカー遺伝子の探索では、1つの特徴的な遺伝子がPMCに特異的に発現しているわけではなく、別の集団でも発現することが明らかとなった。つまり、1遺伝子のみのPMCの同定は難しいことが明らかとなった。そのため、PMCを分離でするために、いくつかのマーカー遺伝子の組み合わせが必要であることが明らかとなった。 また、タモキシフェン誘導型confettiマウスを作製して、どの程度タモキシフェンを投与すれば副甲状腺の増殖細胞を標識できるのか検証をおこなった。その結果どのように標識された細胞によりどのように副甲状腺細胞が供給されていくのか、そのライフサイクルが明らかになりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
シングルセルトランスクリプトームの結果から、PMCに該当しそうな細胞集団の存在が明らかとなったが、それを明確に示す単一のマーカーはまだ特定できていない。むしろ、複数の特徴的な遺伝子の有無によってのみ、主細胞集団とPMC集団を分けることができるのではないかと考えている。そのため、当初予定していたPMC特異的な遺伝子にCreリコンビナーゼを結合したタモキシフェンマウスでの解析は困難である可能性が明らかになった。今後はISH HCRの技術を用いて、複数の遺伝子発現を組織上で一度に確認して、主細胞、酸好性細胞、そしてPMCの集団を同定する方法を確立する必要があり、その検証をすでに行っている。 現在、すべての細胞でタモキシフェンによりCreが誘導できるマウスとconfettiマウスの交雑種(Tm-Cre/confettiマウス)を用いて、PMC細胞の変遷が確認できそうなので、副甲状腺細胞の再検討はISH HCRとTm-Cre/confettiマウスを用いて明らかにする予定である。
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