研究課題/領域番号 |
20K07428
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49030:実験病理学関連
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
早川 国宏 順天堂大学, 大学院医学研究科, 特任助教 (00573007)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 環境要因 / 自己免疫疾患 / 免疫寛容 / 腸内細菌叢 |
研究開始時の研究の概要 |
通常、私たちは様々な環境要因に曝露されて生活している。このような環境要因はアレルギー疾患のみならず、自己免疫疾患の発症や悪化に寄与することが示唆されている。本研究では、代表的な自己免疫疾患である全身性エリテマトーデスを対象とし、環境要因によって腸内細菌叢の変化が起こり、その結果として、通常は反応しない自己成分を認識する、自己寛容破綻起こす機序の解明を行う。このような免疫システムのかく乱機序の一端を解明し、外来成分や内因性分に対する過剰応答を抑制するなど応用することで、様々な免疫疾患への新たな予防・治療戦略の提唱が期待できる。
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研究実績の概要 |
私たちは、普段の生活で様々な環境要因に曝されている。こうした環境要因はアレルギー疾患のみならず、自己免疫疾患の発症や病態に影響を及ぼすことが示唆されている。本研究では、環境要因によって変化する腸内細菌叢が、どのようにして自己免疫応答の活性化に寄与するかを明らかにすることを目的としている。このような外来成分が起点となり、内因成分に対する過剰応答によって疾患を発症する機序を明らかにすることで、様々な免疫疾患への新たな予防・治療戦略の提唱が期待できる。本研究では、主に環境要因による慢性的なTLR7シグナルの活性化を想定し、これによる腸内細菌叢変化が自己免疫応答へもたらす影響を検証している。2022年度に得られた知見を以下に示す。 これまでの結果から、慢性的なTLR7シグナルの過剰な活性化は、確かに腸内環境を変化させ、腸内細菌叢の変化も有意であることを確認している。しかしこの変化は、実験間で増減も含め大きくばらつくことが判明し、コストの面から疾患を制御する腸内細菌叢の同定が困難になった。そこで、自己免疫疾患発症の過程において腸内細菌叢が自己抗体産生に直接関与するかどうかを次の2種類の実験手法で検証した。 まず、抗生剤投与で腸内細菌叢を減少させる手法を試みた。アンピシリン、ネオマイシン、バンコマイシン、メトロニダゾールを自然飲水によって投与を試みたが、マウスがメトロニダゾールを嫌い、飲水しなくなり十分な除菌ができなかったため、メトロニダゾールを除いた3剤混合で検証した。その結果、血中自己抗体価は、抗生剤投与群でわずかに、しかし有意に増加していた。一方で、CD4+T細胞の活性化等の遺伝子発現は、抗生剤投与の有無で変化は見られなかった。次に、腸管上皮バリアの保護を行い、菌体成分の体内移行を阻害することで、同様に自己抗体産生へ影響があるかを検証した。しかし、自己抗体産生に変化は見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度に実施した実験過程で、実験間のばらつきが大きいことがわかり、そのトラブルシューティング作業を実施し、並行して実験モデルの再検討を行ったため、これらに大きく時間を費やすことになった。 これまでの研究過程で、慢性的なTLR7シグナルの過剰な活性化は、確かに腸内環境を変化させ、腸内細菌叢の変化も門の分類では有意であることを確認しているが、大きくばらつきがあった。以前行ったメタゲノム解析をもとに、科の分類に対象を狭めて同様に追加検証したが、有意に変化したバクテリア (科)を明らかにすることはできなかった。そこで、腸内細菌叢の体内移行の阻害を行う手法の確立や、できるだけ実験開始時の腸内細菌叢を均一にするなど、自己抗体産生における腸内細菌叢と免疫システムの相互作用を検証する最適な実験モデルを再検討している。
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今後の研究の推進方策 |
研究施設規模の都合、マウスはブリーダーより購入するしかないため、適切な実験モデル作製を引き続き検討する。解析コストの問題で、すべてのサンプルをメタゲノム解析することができない。4例程度の小頭数で試行し、有意に変化する細菌叢を抽出し、別の10例程度でも顕著に増減する細菌叢を同定する。 並行して、腸内細菌叢およびその代謝物が体内への影響をできるだけ軽減させる手法で、自己抗体産生への影響を検証する。具体的には抗生剤の単剤および複数剤の組み合わせによって検証する、または腸管上皮バリアの保護による菌体成分の体内移行の阻害、およびこれらの組み合わせを検討する。 以上の手段によって、残存腸内細菌叢にばらつきがなく、かつ自己抗体量の増減が見られる場合はメタゲノム解析によって菌種の特定を試みる。今年度の成果では、広域スペクトル抗生剤セットのうち、メトロニダゾールを除いた3剤混合の場合、自己免疫誘導下で自己抗体が増加した。つまりメトロニダゾール感受性バクテリアの影響が示唆されるので、これの詳細な機序も検討する。
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