研究課題
基盤研究(C)
鋸歯状病変の多発は大腸がんの高リスク因子である。我々は多発鋸歯状病変の背景大腸粘膜に、腫瘍発生の素地となる分子異常が存在するという仮説を立て、エピゲノム解析を行った。その結果、多発鋸歯状病変の背景粘膜において特徴的なDNAメチル化を見いだし、それが重要ながん遺伝子の発現調節に関わっていることを明らかにしつつある。本研究では多発鋸歯状病変をモデルとして、大腸発がんリスクに関わる分子異常の同定とサーベイランスへの臨床応用を目的とする。
本研究は、多発鋸歯状病変からの大腸がん発生メカニズムを解明し、大腸がん高リスク患者のサーベイランスにつなげることを目的とした。多発鋸歯状病変および背景粘膜のDNAメチル化とヒストン修飾を解析した結果、多発鋸歯状病変の背景粘膜では、転写抑制のマーカーであるヒストンH3リジン27トリメチル化(H3K27me3)が上昇していた。背景粘膜のH3K27me3は腫瘍部のDNAメチル化と正の相関を示し、逆に背景粘膜のH3K4me3は腫瘍部のDNAメチル化と負の相関を示した。これらのうち、多発鋸歯状病変の背景粘膜において高頻度にH3K27me3を示すマーカー遺伝子候補としてTLX2とGABRA4を同定した。
大腸腫瘍の背景粘膜においてDNAメチル化異常が蓄積するという報告はこれまでにも見られるが、本研究ではヒストン修飾が大腸腫瘍のfield defectに関わるという知見を得た。背景粘膜におけるヒストン修飾は、多発鋸歯状病変のリスクマーカーとして応用しうる可能性が示された。また、大腸粘膜におけるヒストン修飾が、大腸腫瘍発生におけるDNAメチル化異常のトリガーとなっている可能性を示した。
すべて 2023 2022 2021 2020
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (7件)
J Gastroenterol Hepatol.
巻: 38 号: 2 ページ: 301-310
10.1111/jgh.16055
Cancer Science
巻: 112 号: 10 ページ: 4151-4165
10.1111/cas.15080
Anticancer Research
巻: 41 号: 6 ページ: 2817-2828
10.21873/anticanres.15062
Gastrointestinal Endoscopy
巻: 93 号: 4 ページ: 952-959
10.1016/j.gie.2020.07.040
Endoscopy International Open
巻: 08 号: 07 ページ: E840-E847
10.1055/a-1161-8596
巻: 91 号: 1 ページ: 185-190
10.1016/j.gie.2019.08.042