研究課題/領域番号 |
20K07686
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50020:腫瘍診断および治療学関連
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研究機関 | 近畿大学 (2022) 藤田医科大学 (2020-2021) |
研究代表者 |
桑原 一彦 近畿大学, 大学病院, 講師 (10263469)
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研究分担者 |
酒井 康弘 藤田医科大学, 医学部, 講師 (20754394)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 転写共役型DNA傷害 / 転写共役型DNA傷害 / 非遺伝性乳癌 / BRCA / PARP阻害剤 |
研究開始時の研究の概要 |
PARP阻害剤オラパリブは現在抗がん治療に適応されており、合成致死の原理に基づきBRCA1/2変異を有する乳癌や卵巣癌の維持療法で有効性が認められている。しかしBRCA変異は全乳癌患者の約5%のみでみられ、大部分の非遺伝性散発性乳癌では治療効果が得られない。申請者らはマウスモデル、ヒト臨床検体を組み合わせた複合的解析から非遺伝性散発性乳癌の疾患感受性遺伝子としてganpを同定し、GANPがBRCA2のタンパク発現を制御することを明らかにした。本研究ではGANP発現低下によるBRCAness誘導に至る分子機構を利用し、BRCA変異の有無に依らないPARP阻害剤による新規乳癌治療戦略を提示する。
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研究実績の概要 |
2022年度は以下の項目に関して研究を行った。 a) 乳腺特異的GANP欠損による乳腺上皮にゲノム不安定性にはBRCA2発現低下が関与するかの検証: 引き続きBRCA2遺伝子のクローニングを継続して行 い、long PCRによりタンパク翻訳領域のクローニングを終了し、発現ベクターへ組み込んだ。ヒト乳がん細胞株MCF7での発現を確認したが、非常に活現レベルが低く、トランスジェニックマウス作成へと進むことは困難と判断した。 b) GANPは標的分子BRCA2をどのように制御しているかの検証: ヒト乳癌細胞株MCF7を用いてHATドメイン欠失変異体の作製を試み、まだ途中ではあるが候補クローンの樹立に成功した。最終的にシングルクローンを単離することを行う予定である。GANP遺伝子からHATドメインを欠失させた変異体を作製し、それを過剰発現する細胞株と全長GANP遺伝子を発現させたコントロール細胞との間で遺伝子発現解析を行い、候補遺伝子を同定し、一つはThrombomodulinであった。この分子が実際に乳がん組織で発現しているのかを解析する。 c) 乳癌組織検体においてGANPの発現とBRCA2の発現に相関がみられるのかの検証: 抗BRCA2抗体による免疫染色の条件が決定できたため、非遺伝性散発性乳癌の臨床検体を用いて解析したが、両者の発現には明らかな相関は得られていない。 d) GANP発現抑制細胞においてPARP阻害剤の効果の検証: 細胞のsphere形成によりPARP阻害剤の効果をみようと考えたが、残念ながらsphere形成がみられない細胞であった。MTTアッセイで十分に効果がみられることが明らかになり、GANPノックダウン細胞を樹立している。この実験に関しては、現在乳癌細胞株と卵巣癌細胞株を用いて行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度の遅れの影響で今年度も研究計画は全てのパートにおいてやや遅れている。BRCA2遺伝子のクローニング、GANP HATドメイン欠損変異体の作製、 BRCA2の免疫染色などはほぼ終えて、解析を継続しているが、成果としては満足のいくものが得られていない。これまでの解析結果を踏まえて、少し計画を変更しており、実際に論文発表できるようにしたい。
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今後の研究の推進方策 |
GANPがBRCA2をどのように制御しているかのメカニズムはこれまでの解析から明らかにできていないが、現時点でGANP HAT活性が制御している可能性を考えている。HAT欠失細胞株の樹立はほぼ感染しているため、コントロール細胞との間で遺伝子発現を確認することで、 BRCA2発現の制御機構を示すことができると期待できる。本研究課題の最も重要なポイントであるPARP阻害剤の効果に関しては期待が持てるが、乳癌よりもむしろ卵巣癌で効果的であるという結果が予備的解析から得られている。この点に関しては、残りの研究期間でBRCA2安定化因子で、かつGANPと結合するDSS1の解析により、より詳細に明らかにしていく。
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