研究課題/領域番号 |
20K07850
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52010:内科学一般関連
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研究機関 | 高知学園大学 (2021-2022) 熊本大学 (2020) |
研究代表者 |
奥宮 敏可 高知学園大学, 健康科学部, 教授 (50284435)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 赤血球内クレアチン / 赤血球加齢 / 赤血球寿命 / 溶血性貧血 / 造血能 / 糖尿病 / ヘモグロビンA1c / グリコアルブミン / HbA1c / 赤血球平均加齢 / 血管内溶血 / クレアチン |
研究開始時の研究の概要 |
現在、HbA1cは糖尿病患者の治療指針を決定する際の重要な指標であることから、血糖コントロールのゴールドスタンダードとして広く臨床の場で利用されている。しかし、HbA1cは溶血や失血に伴う赤血球寿命の短縮により、偽低値になることが指摘されているが、実際に赤血球寿命の変化(赤血球加齢の変化)がどの程度HbA1c測定値に影響を与えているのか、それを直接検証した報告はほとんどない。Cr51による赤血球寿命の測定もわが国では実施されていまない。そこで、赤血球内クレアチンを赤血球寿命の指標として用いてHbA1cへの影響を明らかにする。
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研究実績の概要 |
過去1~2か月の平均血糖値を反映するヘモグロビンA1c(HbA1c)は、糖尿病の診断ならびに経過観察のゴールドスタンダードとして欠かせない検査項目となっている。一方、赤血球内クレアチン(EC)は赤血球の平均加齢(赤血球寿命)の指標として考えられおり、ECが高値の場合に赤血球平均加齢の低下(赤血球寿命の短縮)を意味し、EC低値の場合には赤血球平均加齢の低下(赤血球寿命の延長)を意味する。HBA1cは過去の平均血糖値を意味するが、赤血球寿命変動によっても値が変化する。すなわち、溶血性貧血などでは血管内で溶血が亢進するために骨髄での造血が亢進し、若い赤血球が循環赤血球内に放出される。若い赤血球のHbA1cは低いので全血のHbA1cも低値を示す。ECを用いてHbA1cの補正値も提案した。また、ヘモグロビンが糖化されるときの反応常数も求めHB1AcとECの関係を詳細に検討した。このように我々はこれまでHbA1cとECについて検討を行ってきた。今年度は対象疾患を広め、他の疾患におけるECに有用性について検討を行った。 透析患者の多くでは腎性貧血を合併するために貧血が生じる。この貧血を是正するためにエリスロポエチンを含む造血促進剤が投与され、患者の造血能を上昇させている。しかし、その内の何割かに造血促進剤に反応せず、造血能が改善されないグループが存在する。今回は造血促進剤に対する反応性をECで評価することができるかどうかを検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
赤血球内クレアチン(EC)の増加は循環血液中に若い赤血球が増えたことを意味し、造血能の亢進を反映する。透析患者では腎性貧血の是正のため造血促進剤(ESA)が利用されている。今回、92例の透析患者のECを測定してESAの効果を検討した。ESAの投与期間を6カ月として、投与初日から3か月目を第一採血日として第一採血日から更に3か月目(投与初日から6か月目)を第二採血日とした。第一採血日にはヘモグロビン、EC、血清鉄、副甲状腺ホルモン、CRP、網状赤血球、ハプトグロビン、カルシウム、トランスフェリンを測定し、第二採血日にはヘモグロビンを測定した。第二採血日のヘモグロビンの値が第一採血日のヘモグロビンの値よりも0.8g/dL以上増加した場合に貧血が改善されたと判断した。ECの値は32例の患者において有意な増加が認められたが、60例では有意な増加は認められなかった。EC、ESA投与量、網状赤血球、ハプトグロビン、ヘモグロビン、カルシウム、副甲状腺ホルモン、トランスフェリンに関してヘモグロビン改善との関係を多変量ロジステック回帰分析で解析したところ、ECが最も貧血の改善の指標として有用であることが判明した。これらのことから、透析患者に対する3か月後のESAの効果の予測にECが最も優れていることが分かった。以上のごとく、ECの臨床応用として透析患者に対するESA効果判定にも応用できることが明らかとなり、研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
骨髄での造血動態の亢進に伴い循環血中に若い赤血球が増えるとECが増加する。したがって、ECは骨髄の造血能の指標としても捉えることができる。一方、赤血球寿命の測定法は51Crを用い赤血球内のヘモグロビンに51Crをラベルし、その半減期を計測して赤血球寿命を算出する方法である。1979年FehrとKnobは、51Crによる赤血球寿命とECの関係(相関性)を溶血性貧血の患者を対象として初めて報告した。我々は彼らのECの単位(mg/100mL)を我々の単位(μmol/gHb)に換算して、51Crによる赤血球寿命との関係をもとに数理モデルを構築し、ECから赤血球寿命(赤血球半寿命)を求める式を確立する。それとともに赤血球加齢変化によるHbA1cへの影響を改善するため、ECを用いたHbA1cの補正の有用性についても検討を試みる。
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