研究実績の概要 |
今回我々は術後放射線治療を施行した患者検体を用いて免疫チェックポイント分子機構による予後への影響について明らかにする。前立腺癌の術後患者において放射線治療を行う技術はすでに確立されているが、手術検体を用いて予後因子を確立する研究手法はほとんど報告されていない。また、免疫チェックポイント分子機構の探索は前立腺癌術後放射線治療の症例での報告は皆無である。当研究によって解明できる結果の新規性は高く、将来の個別化医療の確立に有用と思われる。 目標症例数:約120症例。 適格基準 1) 手術検体を用いて免疫染色が可能である。2) 放射線治療が完遂している。3) 年齢は20歳以上である。4) 本人に病名・病態の告知がなされており,かつ本人に同意能力がある。 除外基準 1) 過去に骨盤部への放射線治療歴がある。2) 本研究の参加を拒否された患者。3) その他、医師の判断により対象として不適当と判断された患者。 上記の対象となる患者において、 臨床因子(年齢、病変局在、グリソンスコア、治療前PSA、合併症)、および治療成績(PSA再発率、無病生存率、全生存率)についてデータを集積し、治療成績の解析を施行した。また、当院病理部とも相談し、免疫チェックポイント分子機構(PD-L1, PD-1)の蛋白発現を調べるため、免疫染色で使用する抗体や試薬について条件設定について検討を行なった。手術標本の病理組織学的特徴(Cribriform pattern, Gleason 5 pattern, 神経周囲侵襲、被膜外進展)や免疫染色(MCU1c, NKX3.1, SOX9, Pax2, Synaptophysin, GRP, ETV1, YAPTAZ, ERG, PTEN, VAV3, PAK1)を行い、臨床成績との相関を評価した。病理部門とも協力して、免疫染色について解析を開始している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、臨床データの集積を継続し、治療成績の解析を行う予定である。 免疫チェックポイント分子機構や免疫染色の結果を標識された腫瘍細胞の数および染色強度について定性的に解析し、症例を陽性群と陰性群に大別する。約120症例を解析し、陽性群と陰性群での二群間で治療成績の差を検討する。Kaplan-Meier methodで局所制御率や生存率の曲線を描き、有意差についてLog-rank testで解析する。約120症例あれば、2群間に分けての有意差検定(P < 0.05)で、予後因子を検出するには十分と考える。さらに手術標本の病理組織学的特徴(Cribriform pattern, Gleason 5 pattern, 神経周囲侵襲、被膜外進展)についても、免疫チェックポイント分子機構との関連や、臨床成績との相関を評価する予定である。
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