研究課題/領域番号 |
20K08427
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53020:循環器内科学関連
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
植田 真一郎 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80285105)
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研究分担者 |
佐瀬 一洋 順天堂大学, 医学部, 教授 (00420828)
大津 洋 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 臨床疫学研究室長 (40372388)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 抗がん剤 / 心血管毒性 / 乳がん / アンスラサイクリン / トラスズマブ / がんサバイバー / 心血管リスク / 心不全 / 心臓腫瘍学 / トラスツズマブ / クレームデータベース / 心毒性 / ハーセプチン / 心血管イベント |
研究開始時の研究の概要 |
本研究計画の目的は抗がん剤治療に伴う心毒性、心不全に適切に対処し、抗がん剤治療を完遂させがん患者の予後を改善すること、さらに治療が成功したがんサバイバーの長期の心血管リスクの低減を図ることである。これらを実現するために生物統計家、臨床薬理学者、乳腺外科、循環器内科医のチームで抗がん剤治療を受けた乳がん患者のデータベース解析、後ろ向きコホート研究およびがんサバイバーを含む冠動脈疾患患者のレジストリでの後ろ向きコホート研究を行い、予後に関連する因子を明らかにし、短期、長期の抗がん剤治療に関連する心血管系有害事象の克服の方策を提案する。
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研究実績の概要 |
抗がん剤開発や他の治療法の進歩によりがん患者の予後は改善しつつあるが、抗がん剤の心血管毒性、特に心不全発症や治療成功後のがんサバイバーにおける心血管リスクの上昇が問題になっている。前者は1960年代にアンスラサイクリン開始後に重篤な心不全発生が報告され、その後トラスツズマブでの報告も相次ぐが現在に至るまで根本的な解決方法は見出されていない。特に抗がん剤治療の継続、中断、再開などについての明確な指針はなく、最終的に心毒性を回避あるいは克服して抗がん剤治療を完遂あるいは継続するための、エビデンスに基づいた方法は確立しているとは言えない。我々はクレームデータベースを活用し、およそ12,000人の乳がん患者のデータを抽出、解析した研究でトラスズマブ使用患者は術後18ヶ月以内の心不全発症リスクが非使用患者の2.28倍と高いこと、しかし事前の心機能や心不全の危険因子評価が十分なされていないことを報告した。がんサバイバーの心血管リスク上昇については最近の研究で明らかになりつつあるがそれが長期にわたるがん治療の心毒性を反映するのか、罹患したがん種の影響なのか、あるいは患者の心血管リスクとがん罹患・治療の相互作用なのかはっきりしない。直接的な抗がん薬の動脈硬化への影響、心不全発生などのメカニズムを同定するなら動物モデルや細胞でのin vitro実験が成立する。しかしサバイバーの予後のような長期に多くの因子が影響する場合は、心血管リスクを上昇させる特異的な要因の解明にはバイオマーカー解析を含めたコホート研究が必要となる。とりわけ非がん患者と比較するには同程度の心血管リスクを共有する、両者を含む集団のコホート研究が適している。実際我々は予備的な解析ながら同程度のハイリスクの動脈硬化性疾患を有していても、がんサバイバーの心血管死亡は非がん患者に比べて高く、従来の報告と一致することを報告している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
がんサバイバーの長期心血管予後を評価するレジストリ研究はCOVID-19のため医療施設にCRCが入れず、十分なデータの収集、データクリーニングができず解析の準備が整っていない。これは2023年度に5類感染症になったのち再開予定である。データベース解析はある程度進捗し、年度末の日本循環器学会で報告を行ったが、対面での打ち合わせが十分でないことから論文作成などが遅延している。
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今後の研究の推進方策 |
遅延が見られるレジストリ研究を中心に進める。レジストリ登録後はCRCがフォローアップし、死亡、心血管イベント(心筋梗塞、脳卒中、心不全)、薬剤、心腎機能などの検査所見、危険因子の管理状況を収集している。約8000人の段階で一度解析を実施したががんサバイバーでは年齢性を補正後の死亡率が非がん患者に比べ高いことも報告しており、今後がんサバイバーと非がん患者の生存解析、がん種、危険因子管理状況など重要な説明変数と予後の関連解析、がんサバイバーと非がん患者の関連の違い(交互作用)の解析をより大規模な集団で実施する。
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