研究課題/領域番号 |
20K08574
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53030:呼吸器内科学関連
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研究機関 | 山梨大学 (2022) 慶應義塾大学 (2020-2021) |
研究代表者 |
池村 辰之介 山梨大学, 大学院総合研究部, 特任講師 (30445291)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | オルガノイド培養 / 肺癌 / 病理学的診断 / 分子生物学的診断 / 精密医療 |
研究開始時の研究の概要 |
これまでは組織検体としてほとんど意義を持たなかったごく微小な生検検体、残余検体だけでなく、生検器具洗浄液、胸水、喀痰などの液性検体からでも、癌細胞を増やし、解析できることが、オルガノイド培養技術の強みである。また、肺癌オルガイドを確立できれば、診断だけでなく、薬剤感受性・耐性の評価などの実際の治療面においても、活用できる可能性がある。 本研究では、各患者から採取した検体から樹立した肺癌オルガノイドが、実際の肺癌検体と、病理学的、分子生物学的な相同性、相違性を評価する。臨床情報と比較することにより、薬剤感受性・耐性についても評価を行う。
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研究実績の概要 |
申請者らは、肺癌の多様な分子生物学的、組織学的な表現型を有する患者由来の肺癌オルガノイドライブラリーを作成した(Ebisudani T et al. Cell Rep. 2023 Mar 28;42(3):112212.)。 肺癌患者から得た手術検体、気管支鏡生検、胸水から肺癌細胞を分離し、まず、EGF/IGF-1/FGF-2(EIF)、Noggin、TGF-β阻害剤、Wnt-3A/R-spondinを含む既報の条件下で培養した。次に正常気道上皮の増殖を抑制するために、Nutlin-3を追加、その後EIF除去、ERBB阻害剤追加、というオルガノイド培養方法を確立した。 オルガノイドは少なくとも5代継代すること、凍結保存後も再度培養、増殖させることが可能であった。樹立割合は、腺癌と扁平上皮13%、小細胞癌78%、大細胞神経内分泌癌100%であり、喀痰、血中循環腫瘍細胞(CTC)といった、低侵襲に得られる検体からもオルガノイドを樹立可能であった(それぞれ5株、3株)。以上、4つの主要な組織型(腺癌 21、扁平上皮癌 7、小細胞癌 12、大細胞神経内分泌癌 3)を網羅する43の肺癌オルガノイドライブラリーを確立した。 オルガノイドを免疫不全マウスに移植し、その病理組織をそれぞれ患者の腫瘍と比較した。病理学的所見と、組織学的マーカーであるNKX2-1(TTF-1)、p40、NCAM1の発現は、原発組織、オルガノイド、マウス移植片で一致した。また、遺伝子変異、コピー数異常、異数性において分子生物学的特徴を有しており、オルガノイドにおけるmRNA発現は、腫瘍におけるタンパク質発現と一致した。これらの結果により、オルガノイドが癌由来であること、および、組織病理学的、分子生物学的な同一性が保たれていること示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
遺伝子エンジニアリング、解析に遅れが生じており、1年延長を行った。
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今後の研究の推進方策 |
患者由来の肺癌オルガノイドのライブラリーを作成し、組織学的、分子生物学的特徴が維持されていることを示した。今後はさらなる肺癌オルガノイドライブラリーの拡充と詳細な臨床情報との同一性、薬剤感受性・耐性など臨床的な有用性の検討を行う予定である不十分な量の検体しか採取できない、治療経過中に何度も検体が得られない、といった肺癌という疾患での臨床上の問題点をオルガノイド培養により補うことができれば、治療に対する有効性や薬剤耐性など、より多くの治療方針に有用な情報が得られる可能性がある。今後はより実践的な臨床研究のプロトコールの作成、実施を検討している。
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