研究課題
基盤研究(C)
難治性白血病であるフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病(Ph+ALL)は、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)の登場により、治療強度を弱めて治療関連死亡を減らすという方向に治療戦略の転換期を迎えている。そこで、わが国の代表的な白血病研究グループである成人白血病治療共同研究支援機構(JALSG)のTKI時代の3つの臨床試験データと日本造血細胞移植学会の移植登録一元管理(TRUMP)データベースを統合し、Ph+ALLの全治療期間にわたるオールジャパンのデータを解析することで、TKI時代の予後因子を明らかにする。これにより、リスクに合わせた個別化治療を可能とし、患者にやさしい治療戦略を実現する。
初発のPh+ALL206例の63.6%でフィラデルフィア染色体以外の付加的染色体異常を認め、構造異常で+der(22)t(9;22)を最も高頻度に認めた。+der(22)t(9;22)43例の67.4%で染色体異常が3つ以上存在する複雑核型が併存した。併存例では有意に生存率が不良で、再発までの期間が短いという特徴がみられた。多変量解析では、+der(22)t(9;22)、複雑核型単独は有意な因子ではなかったが、併存が生存に対する有意なリスク因子となった。この研究により、+der(22)t(9;22)と複雑核型の併存がPh+ALLにおける有意な予後因子であることが示された。
Ph+ALLにおいて+der(22)t(9;22)と複雑核型の併存が予後不良因子であることを明らかとした。Ph+ALLでは微小残存病変など治療反応性が予後因子として重要視されてきたが、染色体異常という白血病の本質的な部分でも予後を層別化できることが示された。これは、Ph+ALLの治療の層別化につながる重要な意味を持つ。予後不良な群では同種移植を含む治療の強化により治療成績の改善を目指す一方、予後良好群では、治療強度を弱め、治療成績を維持したまま治療関連毒性を減らすことに結びつく。予後因子を明確化していくことで、個々の患者の病態に合わせた過不足ない治療選択を行うことが可能となる。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
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