研究課題
基盤研究(C)
胎児期における血液細胞産生(造血幹細胞からの分化)はおもに肝臓でおこなわれているが、ここでは同時に造血幹細胞の著しい増殖(自己複製)もみられる。この「分化」と「自己複製」という相反する2つの現象を短期間に並行しておこなうことを可能にする仕組みは、未だ解明されていない。本研究計画では、新規遺伝子改変マウス(Creドライバーマウス)を用いた細胞系譜追跡実験を通して、胎児肝臓において「分化」と「自己複製」が同時におこなわれる仕組みの解明を目指す。
本研究は、マウス胎仔期において、造血幹細胞を含む造血システムがどのように形成されるのかを明らかにすることを目的としている。具体的には、「胎生期の造血前駆細胞は造血幹細胞に由来するのか」、「胎生期の造血幹細胞は分化しているのか」、「造血幹細胞への運命決定は転写因子Evi1の量依存的なのか」の3つの問いに答えるべく研究をすすめた。その結果、胎仔肝に存在する造血幹細胞と造血前駆細胞は、Hlf陽性の起源細胞からそれぞれ独立して発生していること、胎生期の血液細胞の大部分は造血幹細胞由来ではないこと、Evi1の発現の高い起源細胞が造血幹細胞の産生に関与していることが明らかとなった。
近年、iPS細胞から様々な種類の細胞の誘導が試みられており、疾患治療・再生医療への応用が期待されている。血液細胞への分化誘導の研究もさかんにおこなわれており、現在までに多種の血液細胞の試験管内誘導が可能となっている。しかしながら、最も応用範囲が広いと思われる造血幹細胞については、いまだ有効な誘導法は確立していない。誘導が成功しない理由として、生体内での造血幹細胞の発生メカニズムの詳細が分かっていないことで、生体を模倣した培養系を構築することができない点が挙げられる。本研究は造血幹細胞の発生機構の一端を明らかにしたものであり、造血幹細胞の誘導法の開発に向けての有用な情報を与えるものと考えている。
すべて 2024 2023 2022 2021 2020 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 7件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
Experimental Hematology
巻: 129 ページ: 104124-104124
10.1016/j.exphem.2023.10.003
Trends in Cell Biology
巻: 34 号: 2 ページ: 161-172
10.1016/j.tcb.2023.06.007
臨床血液
巻: 64 号: 9 ページ: 869-874
10.11406/rinketsu.64.869
Gene
巻: 851 ページ: 147049-147049
10.1016/j.gene.2022.147049
Nature
巻: 609 号: 7928 ページ: 779-784
10.1038/s41586-022-05203-0
Biology Open
巻: 11 号: 9
10.1242/bio.059510
Communications Biology
巻: 5 号: 1 ページ: 776-776
10.1038/s42003-022-03733-x
Leukemia
巻: 35 号: 10 ページ: 2983-2988
10.1038/s41375-021-01268-4
Scientific Reports
巻: 11 号: 1 ページ: 4374-4374
10.1038/s41598-021-83652-9
Blood Advances
巻: 5 号: 6 ページ: 1594-1604
10.1182/bloodadvances.2020002410
https://www.kumamoto-u.ac.jp/whatsnew/seimei-sentankenkyu/20220926