研究課題
基盤研究(C)
侵襲性髄膜炎菌感染症(IMD)は重症度が高く、集団感染事例も多いため公衆衛生的に注視される疾病である。海外では髄膜炎菌のペニシリン系薬(PC)耐性化や第三世代セファロスポリン系薬(3GC)耐性株が確認されたが、本邦での実態把握は不十分である。本研究では、本邦初となる大規模なIMD患者由来髄膜炎菌のPC及び3GC薬剤感受性データを構築する。さらにPC耐性株の遺伝学的特徴やPC耐性化に関わる分子機構を明らかにする。以上より、本邦のIMD治療に有益な情報を提供できる。またPC耐性株発生の制御に繋がる、PC耐性化機構を含めた髄膜炎菌の特性をさらに理解することができる。
髄膜炎菌における血清群別の迅速化は侵襲性髄膜炎菌感染症(IMD)の治療・予防戦略において重要な役割を担う。そこで主要血清群(A、B、C、W、YおよびX)が識別可能なPCR-dipstick DNA chromatography(PCR-dipstick)測定系の開発を試みた。血清群が既知である髄膜炎菌116株(莢膜非産生株を含む)を用いてPCR-dipstick測定系による血清群別を行った結果、その成績は既知データと一致した。また、髄膜炎菌以外のナイセリア属菌種および細菌性髄膜炎の原因菌種(29株)を用いて特異性を検証した結果、いずれも陽性バンドも認めなかった。一方、髄膜炎菌由来DNAや菌液を用いて最低検出感度を確認したところ、既報で示されたmultiplex PCR法等の性能とほぼ同等の成績を示した。以上より、本研究で構築したPCR-dipstick測定系は迅速簡便に主要血清群を識別できる性能をもつと示唆された。今後、臨床検体を用いて評価し、西アフリカなど医療資源が乏しいIMD高流行地域での実装を目指す。得られた成果の一部は国内外の学会(日本臨床微生物学会総会、欧州臨床微生物・感染症学会議)で報告した。また英語論文の投稿準備中である。
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