研究課題
基盤研究(C)
脳死肺移植において、ドナーの末梢血テロメア長が移植後のCLAD発症や生命予後と関連する事、レシピエントのテロメア長が移植後の骨髄機能不全と関連する事が報告されているが、本邦で頻度が高い生体肺移植におけるドナー、レジピエントのテロメア長の臨床的意義については報告がない。本研究では、生体肺移植におけるドナー、レシピエントの末梢血テロメア長の臨床的意義を明らかにする事を目的とする。単施設の後ろ向き+前向き研究によって末梢血テロメア長と慢性拒絶の関連を中心に検討を行う。
京都大学病院で生体肺移植を施行したレシピエント、ドナーを対象として、末梢血テロメア長およびアンギオテンシン変換酵素(ACE)遺伝子多型と慢性移植肺機能不全(CLAD)の関連について検討した。観察期間中に26例でCLAD(閉塞性細気管支炎症候群:BOS15例、拘束型移植片機能不全:RAS11例)の発症を認めた。ドナーの末梢血テロメア長およびレシピエントのACE遺伝子多型と全CLADに有意な関連は認めなかったが、ACEのDD遺伝子多型を有するドナーからの移植肺はRASの発症リスクが高いことが示された。ACE遺伝子多型がCLAD発症のリスク評価に有用である可能性が示された。
肺移植は、内科的治療を行っても救命が困難な難治性呼吸器疾患の治療法として確立している。本邦ではドナー不足から諸外国と比較して生体肺移植が施行される割合が多く、全国における全肺移植の33%を占める(2018年12月末時点)。肺移植後慢性期に肺が機能不全に陥る慢性移植肺機能不全(CLAD)は肺移植の予後を左右する重要な疾患であるが、その発症機序や発症を予測するバイオマーカーは確立していない。本研究結果については再現性の検証が必要であるが、ACE遺伝子の評価が生体肺移植後のCLADのリスク評価に有用である可能性、さらにACEがCLADの予防や治療の標的となりうる可能性を示唆している。
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