研究課題/領域番号 |
20K09586
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56030:泌尿器科学関連
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
小島 聡子 帝京大学, 医学部, 客員准教授 (10345019)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 去勢抵抗性前立腺癌 / 神経内分泌癌 / IGFBP-3 / マイクロRNA / 前立腺癌 / 新規ホルモン療法薬 |
研究開始時の研究の概要 |
我々は、これまでmicroRNAを起点に、去勢抵抗性前立腺癌の発生機序や進展経路に関わる分子経路を探索し、その活性化経路を遮断することによりCRPCに対する新規治療戦略を研究してきた。CRPCの治療を継続すると、最終的にホルモン療法に抵抗性で難治性のCRPC, 場合によってはPSAの上昇を認ない状態で、内臓転移を生じる場合あがある。その病態のひとつとして注目されるのが、神経内分泌版である。本研究は、前立腺癌神経内分泌癌における診断マーカーの同定および新規治療標的となりうる分子を同定することを目的とする。
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研究実績の概要 |
前立腺癌は早期癌であれば根治治療が施されて長期の予後が得られるが、20年後には再発再燃し、ホルモン抵抗性の癌になる場合がある。また、転移癌で発見された場合は、初期の前立腺癌はホルモン感受性癌であるが、数年のうちにホルモン抵抗性となり、転移を生じ最終的には死に至る。20年前には、転移性前立腺癌の予後は2年程度であったが、近年、新規ホルモン療法薬や抗癌剤の適応により、3~5年と以前に比べて長期の予後が期待される。 ホルモン抵抗性を獲得する機序は様々な説はアンドロゲンレセプターの増幅、上皮間葉転換(EMT: Epithelial Mesenchymal Transition), アンドロゲンの異所性産生、アンドロゲンに対する感受性の増加、がん抑制遺伝子の発現低下、がん遺伝子の発現増加など様々な原因が唱えられているが、いまだに明らかではない。これまで我々はがん抑制遺伝子として機能するmicroRNAに着目し、その標的遺伝子の機能解析を行ってきた。microRNAは転写される非機能性RNAであるが、さまざまな遺伝子の発現をコントロールしていることが近年明らかになってきた。データベース上の発現解析より、IGFBP-3の発現が高いものは、より予後が悪いことが示された (Molecular Oncology, 13(2):322-337, 2019) 。また、研究者は以前留学先のバンクーバーProstate Centerにおいて、IGFBP3が去勢後に発現が高くなり、ホルモン抵抗性に寄与することを報告した。今回我々は、IGFBP-3が前立腺癌患者の血清中の発現、組織学的な発現、また去勢前と去勢後の発現の比較を行い、IGFBP-3の発現の変化を明らかにすることを目的に研究を行った。また、神経内分泌化の組織学的マーカーであるProGRP, NSEなどの発現も同時に検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①合計120名分の血清中のIGFBP-3, Enolase(NSE)の発現をELISAを用いて行った。結果は、高度な転移進行癌においては、IGFBP-3の血清中の発現は高値になるが、ホルモン療法前の早期癌患者と去勢抵抗性前立腺癌患者の間で、IGFBP-3の発現に差は認めなかった。また、血清中のNSEはおおむね低値で、前立腺癌においては計測の意義はないと思われた。 ②組織学的にIGFBP-3の発現が高いものが進行癌であることが示唆された。同じ症例において、IGFBP-3の発現を経時的に観察すると、去勢前と去勢抵抗性前立腺癌になった後とでは、IGFBP-3の発現が明らかに強くなっているものが複数認められた。以上の結果から、IGFBP-3は前立腺癌の進行に伴い発現が強くなり、癌の進展に関与している可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度の研究において、高リスク前立腺癌の生検組織標本におけるIGFBP-3の発現は、低リスク前立腺癌において高いことが示された。また、進行する過程で、IGFBP-3の発現が高くなった症例の予後は不良である傾向が示唆された。 2023年度は、さらにその結果を実証するため、実際の前立腺癌の症例数を増やして、系統的にIGFBP-3の発現を観察し、予後因子となりえるかどかを検討する。具体的な実験計画は、転移性前立腺癌の症例の臨床組織検体からIGFP-3の発現を組織学的に観察し、その発現量の増加が予後因子として有用かどうか、症例数を増やして検討する。
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