研究課題
基盤研究(C)
高齢者における顎関節など関節部の機能低下は、筋組織の加齢変化だけでなく筋束断端に付着する腱・骨という連結部の構造破壊によることも多い。すなわち運動器を構成する組織複合的な構造維持が高齢者の機能低下を防ぐ重要な鍵となる。「骨-腱-骨複合体」の強固な連結を維持するために必要な筋内腱をつくる細胞の供給源は、筋芽細胞と腱芽細胞の遊走と形質転換であると申請者のこれまでの研究成果から考えているが、その詳細と筋内腱の形態形成の制御機構についてはわかっていない。本研究では、筋内腱の細胞供給先の特定と形成メカニズムを解明する。
3年間の研究機関を通し、運動器の一部である筋付着部の腱の再生という見地から、筋・腱・骨複合体の維持機構を考察した。研究材料は、6週齢のC57BL/6Jマウスを用いた。運動機能の回復を確認するために関心領域をアキレス腱として、メスにて損傷を与えた。マウスは、疑似オペであるSham群、損傷後1週群(POW1)、2週群(POW2)、4週群(POW4)の各4ステージを設けた。各ステージで生理学的試験、RT-PCRを行ったのちに、通法通りパラフィン切片を作成し組織学的形態計測、免疫組織化学染色を施し解析を行った。その後、Sox9‐CreERT2;dTomatoマウスを作成しSox9の細胞系譜解析を行った。組織学的検索を行った結果、POW1では腱組織の連続性を欠いたが、POW2では腱再生において重要な役割を示す腱外側部分のepitenon領域の形成が認められた。次に、RT-PCRを行った結果、腱再生に重要なα-SMA,POSTNと共にSox9の発現もPOW2で特に有意な増加を示した。この事は、epitenon領域の再生時期とも一致した。さらに免疫組織学的染色の結果、POW2においてepitenon領域から流れ込むようにSox9が損傷部位に集積することが明らかとなった。次に、Sox9‐CreERT2;dTomatoマウスを作成し、アキレス腱損傷前にタモキシフェンを投与したPre群と、損傷後にタモキシフェンを投与したPost群を比較した。損傷部に集積する細胞は、Post群の方が有意に多いことが明らかとなった。今回の研究より腱再生時にSox9が損傷部に発現することが明らかとなった。また損傷部に集積するSox9陽性細胞は、損傷後に集積してくる幹細胞がSox9にスイッチングすることで腱再生に関与していると考えられた。
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