研究課題/領域番号 |
20K10322
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58010:医療管理学および医療系社会学関連
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
松本 武浩 長崎大学, 病院(医学系), 准教授 (20372237)
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研究分担者 |
川崎 浩二 長崎大学, 病院(医学系), 准教授 (60161303)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | クリニカルパス / 医療の質 / 医療安全 / 経営改善 / 原価計算 / 地域連携パス / 電子化クリニカルパス / 地域医療情報ネットワーク / 術前検査 / 病院経営 |
研究開始時の研究の概要 |
クリニカルパス(以下パス)は、医療の質向上、入院日数短縮および医療コスト抑制に有効とされるが、本邦では、入院日数以外の報告は少ない。一方、医療費抑制策の中、病院経営は悪化しており、医療の質と安全を前提とした経営改善が急務である。パスは利用前に薬剤や医療材料を含めた診療内容を検証できるため、コスト削減と医療の質向上を同時に実現できる。しかし、現状のパス利用率は病院間に加え、診療科間にも差がある。この原因はパス効果のエビデンスが不十分なことにより、低評価されている可能性がある。本研究では、パス利用による医療の質、医療安全、経営改善に関する効果と効果を発揮する運用要件の定義を明らかにする。
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研究実績の概要 |
令和4年度の「1.入院クリニカルパスの効果評価」では、令和3年度に示した、パス利用例における①平均入院日数の有意な減少効果および③病院経営における、1例あたりの平均収支および黒字症例率の有意な高さに関し、令和3年度症例を加え同様に分析したが、いずれも令和2年度同様、パス利用例はパス未使用例に対し、平均入院日数は有意に短く、1例あたりの平均収支および黒字症例率は有意に高かった。 一方、「2.外来クリニカルパスの効果評価」として、外来パスとして運用中の術前検査パスが、入院日数の短縮効果および経営改善効果が入院単独よりもさらに有意に高い点を示した。令和3年度は、①③の令和3年度症例を加えた分析に加え、医療安全効果に関し、パス利用の有無による平成30~令和2年度間に退院した57,549名に対するインシデント報告率を、影響度レベル3a以上のレポート件数と報告率を比較した。その結果、パス利用例は、24,986名中2,119件(8.5%)に対し、パス未使用例は32,563名中7,452件(22.9%)と、有意にパス使用例の報告数が少なく(p<0.001)、影響度レベル3a以上のレポートにおいても、パス使用例が397件(1.6%)、パス未使用例が1,557件(4.8%)と有意にパス使用例の報告率が少なく約1/3倍の発生率を示した。(p<0.001) さらに、パス利用例による入院日数短縮効果の交絡を減ずるべく、入院日数20日以内入院に絞り、同様の分析を追加したが、これでもパス利用例の報告数は23,026名中1,247件(5.4%)パス未使用例が24,791名中2,607件(10.5%)、影響度レベル3a以上のレポートでは、パス利用例が186件 (0.8%)、パス未使用例が420件(1.7%)といずれも有意にパス使用例の報告数が少なかった。(p<0.001)以上の結果より、パス利用は医療安全面においても有効である点を示し得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「1.入院クリニカルパスの効果評価」では、令和2年度に、パス利用例の①平均入院日数の有意な減少、②医療の質では、退院後2週間以内の再入院率の有意な減少、③病院経営では、1例あたりの平均収支および黒字症例率の有意な高さを示した。令和3年度では令和2年度例を加えた①③分析が、同様の結果が得られた点を報告するとともに、「2.外来クリニカルパスの効果評価」として、外来パスとして運用中の術前検査パスが、入院日数の短縮効果および経営改善効果が入院単独よりもさらに有意に高い点を示した。令和3年度は、「1.入院クリニカルパスの効果評価」に関し、①③の令和3年度症例を加えた分析に加え、医療安全効果として、パス利用例が有意にパス未使用例に対し、インシデントレポート報告数が少ない点を示した。以上により、入院クリニカルパスにおける①入院日数短縮効果、②医療安全を含めた医療の質への効果、③経営改善効果を明らかにした。外来クリニカルパスでは、術前検査パスにより同様に①入院日数短縮効果②医療の質への効果③経営改善効果を示し得た。残るは、地域連携パスの効果評価であるが、本研究開始期間である令和2年度~令和4年度とちょうど合致したCOVID-19パンデミックによる様々な影響により地域連携パスの評価の遅れがみられたため、研究機関を1年延長して進めている。それでも令和4年度より電子化心不全地域連携パスと電子化糖尿病・歯周病管理パスが運用開始でき、令和5年度に本地域連携パスの利用効果を評価する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究手法である「1.入院クリニカルパスの効果評価」については、令和2年度3年度に、①入院日数に関する評価、②医療の質に関する評価、④病院経営に関する評価を実施し③医療安全に関する評価に関しては、令和4年度にインシデントレポートの報告数の差で評価した。「2.外来クリニカルパスの効果評価」については、術前検査パスの分析によりその効果を評価した。「3.地域連携パスの評価」については、長崎県の地域医療情報ネットワーク「あじさいネット」に構築した地域連携パスのうち乳がんパスと心不全パスを対象に想定していたが、乳がんパスの適用患者が結果的に少なく、さらに本研究機関の一致したCOVID-19パンデミックによる診療への影響で、地域連携パスの推進にも影響を受けたため令和4年度予定分を令和5年度実施予定として、心不全パスと別途計画した糖尿病と歯周病の相互治療効果を意図した糖尿病・歯周病パスを対象に、運用状況を評価し、①適切な運用に関する評価、②医療の質に関する評価、③紙媒体地域連携パスとの比較を実施する。
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