研究課題/領域番号 |
20K11274
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59010:リハビリテーション科学関連
|
研究機関 | 熊本保健科学大学 |
研究代表者 |
申 敏哲 熊本保健科学大学, 保健科学部, 教授 (70596452)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
|
キーワード | 舌刺激 / 脳血管性認知症 / ラット / 細胞死 / 認知症 / 学習能力 / 体性感覚 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、認知症の増加は日本のみならず世界的な社会問題となっている。これらの疾病の予防や治療には、脳を活性化させることが重要であると考えられている。最近、舌への感覚刺激が脳の活性化や記憶・認知能力の増強、脳卒中患者での神経障害等を改善させることが明らかになった。それ故、本研究では脳血管性認知症病態モデルラットを用いて、舌への体性感覚刺激が脳の活性化や記憶・認知能力の増強に影響があるか否かを行動学的手法,分子生物学的手法を利用し、その効果を検討することで、認知症の予防や症状の改善に対するリハとして舌刺激を行うことが、効果的なアプローチの一つとなり得るかを検証するための基盤を構築することを目的とした。
|
研究実績の概要 |
本研究ではWistar系ラット雄を用いてShamコントロール群(Con群)、脳血管性認知症群(P2VO群)、脳血管性認知症+触・圧覚刺激群(P2VO+TPS群)、脳血管性認知症+痛覚刺激群(P2VO+PS群)に分け、舌への触・圧覚、痛覚刺激が脳血管性認知症モデルラットの認知機能低下に及ぼす影響について行動学的手法、免疫学的手法を用いて検討を行った。その結果、認知能力のtestであるRadial arm maze test、Water maze testでは、P2VO群で Con群に対し、記憶力の低下が確認された。しかし、舌への触・圧覚、痛覚刺激を行った舌刺激群では記憶力低下の改善が認められた。短期記憶の評価であるStep-down試験でもP2VO群で逃避時間の有意な短縮が認められたが、舌への触・圧覚、痛覚刺激を行った舌刺激群では P2VO群に対し、逃避時間の延長がみられた。脳血管性認知機能の低下は長期記憶より短期記憶に影響を及ぼした可能性が観察され、舌への刺激効果は僅かであるが触・圧覚が痛覚刺激より効果的で有った。最終日の行動試験終了後、脳組織標本を作成し行ったc-FosとBrdU免疫染色では、記憶の中心部である海馬において、P2VO群でのc-Fos・BrdU陽性細胞発現数の低下がみられたが、舌刺激群では増加傾向又は有意な増加が見られた。また、ウェスタンブロット方法にて細胞死に対する舌刺激の影響を細胞死のマーカーであるCaspase-3で検討した。その結果、Con群に対しP2VO群で有意な Caspase-3タンパク質の発現増加がみられたが、脳血管性認知症群に触・圧覚、痛覚激を行った舌刺激群ではCaspase-3タンパク質の若干の発現抑制が見られたものの有意差は認められなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
大学の仕事の内容が変わり業務負担が多くなったことやコロナ感染症対策による研究員研究活動に制限が有ったため遅れている。また、本実験の結果細胞死に関する検討でCon群に対しP2VO群で有意な Caspase-3タンパク質の発現増加がみられたが、脳血管性認知症群に触・圧覚、痛覚激を行った舌刺激群ではCaspase-3タンパク質の若干の発現抑制が見られたものの有意差は認められなかった。しかし、脳血流の問題で発生するischemic strokeの場合ミトコンドリアの機能不全による酸化ストレスとiNOSやnNOSの活性化によるPARP-1の活性化が関連する可能性も考えられる。この部分に対する検討は元の計画には無かった為、計画より遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
本実験の結果細胞死に関する検討でCaspase-3タンパク質の発現を検討したが、若干の変化だけがみられたものの有意差が無かった為、脳血流の問題で発生するischemic strokeの場合、細胞死が起こる別のシグナルカスケードとして、ミトコンドリアの機能不全による酸化ストレスとiNOSやnNOSの活性化によるPARP-1の活性化も検討する必要もあると考えられる。従って、今後、酸化ストレス度とPARP-1の活性化もウェスタンブロット方法を用いて検討を行う。
|