研究課題/領域番号 |
20K11697
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分60020:数理情報学関連
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研究機関 | 統計数理研究所 (2021-2022) 東京都立大学 (2020) |
研究代表者 |
室田 一雄 統計数理研究所, 大学統計教員育成センター, 特任教授 (50134466)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 離散凸解析 / 最適化理論 / 数理工学 / 情報基盤 / アルゴリズム / 経済理論 / 情報基礎 / 資源配分問題 |
研究開始時の研究の概要 |
「離散凸解析」は,凸関数と離散構造と併せて考察する最適化の理論であり,連続世界の凸解析に匹敵する理論を離散世界に構築することを目標とした提唱された,連続と離散を繋ぐパラダイムである. 本研究では,離散凸解析の双対理論を軸に据えて,離散資源の公平配分問題に関する理論とアルゴリズムを構築する.この問題に対して,コンピュータの負荷分散,グラフ理論における向き付け問題,経済学・ゲーム理論における不可分財の公平配分などの様々な文脈において個別の成果が得られているが,離散凸解析に基づく一般的な枠組を作ることによって,離散凸解析の特徴である「分野の横断性」をより発展させる.
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研究実績の概要 |
本研究の目的は,離散凸解析の双対理論を軸に据えて,離散資源の公平配分問題に関する理論とアルゴリズムを構築することである.この目的に沿って,以下の成果を得た. M凸集合上の辞書式最適化問題は,基多面体上の辞書式最適化問題において,変数に整数制約を課した問題と位置付けることができる.後者については,1980年頃に構造定理やアルゴリズムを含む包括的な理論が構築されている.これに関して詳細な文献調査を行い,連続変数の場合と離散変数の場合の構造定理とアルゴリズムの比較を行い,離散変数理論と連続変数理論の構造的な対応関係を解明して論文を完成させた.これにより,基多面体上の資源公平配分問題に関する理論とアルゴリズムの全体像が明確となった. 離散資源の公平配分問題のより一般的問題設定として,劣モジュラ制約をもつネットワークフローを扱った.従来知られていた線形関数を目的関数とする劣モジュラ制約フロー問題の解法と整合する形で,公平配分の成す集合の記述と効率的なアルゴリズムの設計に成功し,論文として公表した. 離散凸解析の理論と多面体的組合せ論を繋ぐためには,離散凸集合の不等式表現を明らかにする必要がある.離散凸解析において,今まで,M凸系統の集合の不等式表現は十分解明されてきたが,L2凸集合の不等式による記述は明らかにされていなかった.本研究においては,L凸集合が有向グラフの最短路に関係した不等式系で記述されることに着目し,L2凸集合の不等式表現を導出した.ここで得られた定理は,離散資源の公平配分問題とは独立に,離散凸解析の基本定理として重要な成果である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,離散凸解析の双対理論を軸に据えて,離散資源の公平配分問題に関する理論とアルゴリズムを構築することである.今年度は,劣モジュラ制約をもつネットワークフロー上の辞書式最適化問題の理論とアルゴリズムに関する論文を完成した.また,詳細な文献調査を行い,連続変数の場合と離散変数の場合の比較を行った.これにより,基多面体上の連続と離散の資源公平配分問題に関する包括的な理論を構築できた.M凸集合やM2凸集合に関する資源公平配分問題の研究はほぼ完成したので,次の段階として,L凸系統の集合を扱うこととし,L2凸集合の多面体的表現,すなわち,L2凸集合を記述する不等式系の解明を行った.今後の展開に向けて,ネットワークフロー上の資源公平配分問題に対して劣モジュラ被覆の理論を用いたアプローチを検討している.以上のように,進捗はほぼ予定通りで,研究はおおむね順調に進展したと言える.
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今後の研究の推進方策 |
離散資源の公平配分問題の理論については,ネットワークフロー上の問題に対して劣モジュラ被覆の理論を用いたアプローチを検討する.また,田村明久氏との共同研究で得られた整凸関数の整数劣勾配に関連する定理や証明手法が,離散凸解析の別の文脈で利用できるかどうかを検討する.これによって,マトロイド性や劣モジュラ性の一般化から出発した離散凸解析の理論が,標準的な手法として確立している多面体的組合せ論とどのような関係にあるのかを含め,種々の離散凸概念の包括的な整理ができるものと期待している.ソフトウェアについては,引き続き,離散凸関数の応用に関する様々なソフトウェアとデモンストレーションのWeb公開を維持する. これらの研究の遂行のために,以下の方々に引き続き協力研究者として協力を仰ぐ予定である:劣モジュラ被覆の理論とアルゴリズムの開発に関してAndras Frank氏(ハンガリー,エトヴェシュ大学),整凸性の解明に関して田村明久氏(慶応義塾大学),離散凸概念の網羅的整理に関して森口聡子氏(東京都立大学),離散凸関数の応用に関するソフトウェアとデモンストレーションの整備に関して土村展之氏(関西学院大学).
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