研究課題/領域番号 |
20K12239
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分64030:環境材料およびリサイクル技術関連
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
遠藤 宣隆 山口大学, 大学院創成科学研究科, 講師 (40314819)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 海水電解 / 水素製造 / 選択性制御 / 天然水利用 / 反応選択性 / 塩素 / 酸素 |
研究開始時の研究の概要 |
安価な天然由来の電解液として、海水や河川水、下水処理水等を用いた、低コストの水素製造を検討する。特にNaClは海水を始めとした多様な水中に含まれており、安価に伝導度を付与できる優れた電解質だが、NaCl溶液はアノードから塩素を優先的に生成することが知られており、多量の水素製造を想定すると問題がある。そこで、主にセル構造を検討することで、NaCl溶液でも酸素を優先的に生成する電解槽の構築を検討する。
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研究実績の概要 |
製作した薄板状の流路を持つ流通型電解槽を用い、白金メッキチタンメッシュ電極(Pt/Ti網電極)を両端(器壁面)に配置し、両極室を市販の陽イオン交換膜(アストム社製、NeoseptaCMX)により隔てて流通型電解槽とした(電極は白金板電極も比較のため用いた)。流路にはチューブポンプにより模擬海水(3.5wt% NaCl水溶液)を流通した。 Pt/Ti網電極・板電極とも塩素の生成量は濃度から推測される塩素選択性よりも低く、酸素生成が起きやすい状況となっており、電極近傍への塩化物イオンの拡散が消費速度に対して不十分となり、酸素生成が有利となっていると考えられることを以前に報告した。 この条件で印加電流を増加させると、この塩素選択性は増加する傾向を示しており、競合反応である酸素気泡の生成による撹拌効果や、両極間の電場により、電極近傍への塩化物イオンの供給が増加していることが示唆される。加えて、流路内の溶液の流れを均質となるようにセルの構造を変更したセルでは、塩素の選択性が特に低電流において増加しており、セル内の流れが滞留すると酸素生成に有利となることが示された。セルをゼロギャップ構造とせず、膜-電極間に流路を配置し、電極部にあえて溶液を滞留する構造として印加電流を下げると、酸素選択性を増加させることができると考えられる。逆に電極内に溶液流れが侵入するような構造・条件として印加電流を上げると、塩素選択性が増加すると考えられる。 流量を変化させた場合、電極が平坦ではないため撹拌効果が生まれ、流量が高いほど塩素選択性は増加する傾向を示しており、流量からも酸素/塩素選択性の制御ができたが、電流変化ほど顕著ではなかった。これは使用した実験装置の構造上、線速度がさほど上げられなかったためと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
流量変化による影響評価や、カルシウム塩またはマグネシウム塩を用いた電極の性能低下の評価を行ったところ傾向は見られるものの、データのばらつきが大きく、実験の再現性に問題があると考えられる。特に後者は電極近傍の濃度が十分に変化していないためと考えられ、工業的な電解条件と比較すると、電流密度が低いことも一因と考えている。そのため、電極面積の小さい小型セルでの実験であれば、電流密度を高めることができ、より再現性高くデータが取得できると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
電極面積が5cm2の小型セルで、従来のセルと同様の流路構造を持つセルを製作しており、これを用いてより高電流密度で、カルシウム・マグネシウムイオンを含む溶液で電解試験を行い、析出挙動とセルの運転条件との関係を検討する。
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