研究課題/領域番号 |
20K12492
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80040:量子ビーム科学関連
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研究機関 | 公益財団法人高輝度光科学研究センター |
研究代表者 |
小谷 佳範 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 分光推進室, 外来研究員 (10596464)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 軟X線顕微鏡 / ナノ集光イメージング / 画像信号処理 / MCD / 顕微鏡技術 / ナノ集光 / 軟X線吸収分光 |
研究開始時の研究の概要 |
軟X線MCD顕微鏡は磁気円二色性の原理を利用して磁性材料の磁区構造や減磁過程をナノスケールで観察できる装置である。従来の全電子収量法ではX線照射によって流れる試料電流からX線吸収量を換算するが、結晶粒の凹凸によって定量的な解析が妨げられる場合があった。そこで、集光光学素子群の一部を小型の検出器に置き換え、X線吸収量と蛍光X線(あるいは二次電子束)の放出角度を同時に捉える新規イメージング法を開発する。放出角度から結晶粒の形状を演算的に導出することで試料の3次元構造と磁化の関係性を明らかにすることを目指す。さらに、デバイスのin-situ計測など磁化ダイナミックスの研究に応用させる。
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研究実績の概要 |
高磁場印加条件にて試料表面の磁区を描画できる軟X線MCD顕微鏡は、永久磁石をはじめとした磁性体の研究に多く利用されてきた。軟X線領域では磁性元素を高感度に測定できる利点がある一方で、光電子の脱出深度が浅いため試料表面のみの観察にとどまるという測定上考慮すべき点がある。そのため、得られたX線吸収像のコントラストは表面状態に大きく依存することになる。これまで研磨試料の表面の保磁力は、VMSなどで測定した保磁力と比較して極端に低い値を示していた。これは表面近傍の結晶構造がその加工過程で破壊され、さらには電子のスピン配置の秩序も失われているものと考えられる。この問題を回避するために、真空中で破断した試料をそのまま観察する方法が有効であることが示されている。永久磁石の破断面をミクロに観察すると、一辺が数μmサイズのファセット面からなる結晶粒が露出している。前年度はこのファセット各々の傾斜角を演算的に求める手法を考案し、表面3次元構造の再構成を試みた。2022年度は4象限フォトダイオードで取得したデータの解析を進めた。これまで試料と集光素子の配置の制約から面直磁化成分のみしか検出できなかったが、4象限フォトダイオードの導入によって一部の結晶粒の磁区像では面内磁化を捉えていることが明らかになった。これは発展的な目標としていた磁化の3次元可視化のための第一歩であると考えている。さらにいくつかのファセット面でも同様の現象がみられるため、これらをより詳細に検証することで磁気計測の新たな手法として確立できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究で開発している4象限検出器は軟X線MCD顕微鏡装置に搭載するものであるが、当該装置は2022年度に3 GeV高輝度放射光施設ナノテラスに移設し、現在立ち上げ中にある。そのため放射光利用実験が中断しており、当初計画と比較すると、進捗はやや遅れている状況となる。この不都合を解消するためにSPring-8でイメージング装置の製作を進めている。2023年度は組み立てを実施、2024年度は利用実験を再開する予定である。本研究を遂行するにあたり、当面の間はこれまでに取得したデータを使って、検証とデータ解析をすすめることになる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は未解析となっている試料についても画像解析を進め、3次元像の再構成を試みる。永久磁石破断面で観察された面内磁化の磁気コントラストについても詳細な検証を行い、磁化の3次元可視化に取り組む予定である。開発した計測手法によって、軟X線MCD顕微鏡がより広範囲な応用研究に供される装置に発展することを目指す。
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