研究課題/領域番号 |
20K12817
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01030:宗教学関連
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
斎藤 喬 南山大学, 南山宗教文化研究所, 講師 (40721402)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 怪談 / 憑依 / 表象 / 宗教文化 / 精神医学 / 狸憑き / 神経 / 憑き物筋 / 八百八狸 / 狐憑病 / 狸合戦 |
研究開始時の研究の概要 |
ヨーロッパの近代的な精神医学が導入され始めた明治初期において、日本の伝統的な宗教文化に見られる動物が「つく」幽霊が「つく」といった事態は、病理学的な解釈に基づいて観察・診断の対象となった。だが実際に憑依現象は過去の遺物とはなっておらず、今日でも世界各地で生じる普遍的な出来事であり、その再解釈は被憑依者個人とその共同体の世界観に再編成を促す重大な契機となっている。この研究では、当時の日本の怪談噺を事例として取り上げながら憑依現象が病理化する過程を問題にすることで、宗教と科学が対立する場面で生じる原理的な葛藤について検証する。
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研究実績の概要 |
令和四年度は、憑依現象をめぐる宗教文化の精神医学化についてこれまでの研究成果を出版するとともに、令和五年度の総括に向けて単著出版の準備を進めた。 (1)『怪異と遊ぶ』出版によって「阿波の狸合戦」の研究成果を公表 令和二年度から調査を進めてきた「阿波の狸合戦」についての論文が、令和四年四月に青弓社から出版された『怪異と遊ぶ』に掲載された。今回の論文は、すでに発表したこれまでの研究活動、特に日本の精神医学における「狐憑病」概念の検討および伊予の「八百八狸」信仰の調査を踏まえた内容となっている。 (2)落語・講談の口演速記「四谷怪談」関連の単著出版の準備 最終年度となる令和五年度に研究活動の全体を総括する目的で、現在、落語・講談の「四谷怪談」関連の単著出版の準備を進めている。当該年度に刊行する予定で計画しており、江戸時代から語り継がれながら、「神経」のような明治期の怪談噺をめぐる重要概念に彩られて口演された速記本を対象に、憑依の表象をめぐる宗教文化の精神医学化について研究成果をまとめていきたいと考えている。 また、上記とは別の文脈で、「津山事件」の犯人の遺書を分析する論文を『中央評論』第322号に投稿した。これは「精神異常」の歴史性・宗教性を精査する目的で、近代以降の「無差別殺人」の論理と怪談噺の祟りによる大量殺人の論理との比較検討を前提にして書いたものである。この問題については、今後も引き続き調査する予定であるが、最終的には(2)の研究成果に接続することになる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までに引き続き、動物憑依をめぐる精神医学の言説について検討するとともに、出版準備中の著作においては、怪談噺研究の最重要問題である幽霊の恐怖を近代化の過程にある憑依文化という文脈の中に位置づけることを目的としている。これらの課題について、最終的な総括によって結論づけることができるよう、さらなる調査を進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
研究課題の骨子は、近代精神医学の憑依概念が明治期の日本においてどのように受容され、江戸以来の怪談文化およびその根底にある宗教性がどのように変容したかを探究することにあるので、最終的な総括においてもこのような比較宗教学的な視点を念頭に置きながら研究を推進していく。
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