研究課題/領域番号 |
20K13413
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分06010:政治学関連
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
佐々木 優 金沢大学, 法学系, 講師 (00822264)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 国家発展 / 政治正統性 / インフラ / 経済発展 / 欧州 / 近世 / 歴史政治経済 / 官僚制 / 近代化 / 検閲 / 正統性 / 比較政治 / 政治経済 / Political Development / Plague / Europe / 歴史実証研究 |
研究開始時の研究の概要 |
私の研究では、「国家がどのようにして統治力を獲得していったのか」を検討します。最先端の研究では、日本のような先進国は経済的な豊かさと高い税収率を両立していますが、途上国では経済開発が困難でかつ税収率が先進国よりも低い状況です。本研究では、この違いがどこからきたのかを明らかにするために歴史資料などからデータセットを新たに構築し定量分析を行います。制度の構築と国家統治力の因果関係を明らかにするため、14世紀欧州で発生した黒死病に着目し、その後国家がどのように税収などの制度を再建し統治力を高めていったか、について検討します。この研究を中心にその他英字論文三本とモノグラフ一冊を執筆予定です。
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研究実績の概要 |
本研究は、国家の統治力発展(consolidation of state authority)を多角的に検討することを目的とし、欧州の歴史を紐解きながら実証研究を行なっている。2022年度は主にオンライン国際学会報告を通じて研究報告を行い、フィードバックを得るよう努めた。 国際学会は、米国を本拠地とする二つの学会でオンライン報告を行った。報告論文は、革命前夜のフランスを題材とした、国家による出版物の検閲への強さと政治的正統性(political legitimacy)との関係を検討する実証研究である。当時のフランスでは、啓蒙主義の広まりにより表現の自由を求める気運が高まったが、一方国家は王政や教会の権威を守るため検閲体制を強化していた。ただしフランスは実際の遂行力(state capacity)に乏しく、国内外からの「禁書」の流布を許していた。史学においてこの実態は確認されていたが、どのような本が禁じられたのか、あるいは出版後に没収されたのかはよく分かっていない。本研究ではこれまで、約1,500冊の禁書に関する情報をデジタル化し、どのようなタイトルや題材の本が狙われやすいのかに関する実証研究を行った。 別のプロジェクトでは、近世フランスにおける郵便網の発展を題材に国家の統治力発展について研究を行った。欧州では16世紀前後から郵便制度が刷新され配達スピードが顕著に上がった。現代では、郵便のようなインフラに投資することは経済活動を活性化させ、経済発展につながることが予測できるが、当時は技術革新はなく、制度の改善を中心とするインフラ強化がなされたが、こうした状況でも経済発展への影響はあったのだろうか。本研究では、1553年から1835年までに発行された5つの郵便網地図をデジタル化し、地理的情報などを組み合わせた実証研究を行った。本年度は国内のセミナーにおいて一度報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
事業期間4年間(2020-23年度)のうち最初の3年はコロナ禍で研究費を予定どおり執行できなかったが、その分資料・史料のデジタル化を進め、複数のデータセットの大幅な拡充を行った。2022年度はそれに基づく論文の改訂を行い、23年度の国際学会やワークショップ・セミナー報告(複数)につなげることができたため、これらを勘案して「順調」とみなすことができる。
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今後の研究の推進方策 |
2022年後半以降、日本入国における水際対策が緩和されはじめたため、2023年度は対面での国際学会報告を行い、フィードバックを得つつネットワーク構築を再開する。対面での報告やネットワーク構築が重要なのは、潜在的査読者が聴衆にいる可能性があり、知己を得ることで国際誌の査読プロセスにおいて有利に働くことが考えられるからである。 2022年後に進めた論文は、3件の国際学会・ワークショップやセミナーにて報告を行う予定である。また1件の国内学会でも報告予定がある。ここでのフィードバックを元に論文の改訂を進め、年度内に国際誌の投稿を行う予定である。 なお、本研究課題は今年が最終年度であるが、事業期間4年間(2020-23年度)のうち最初の3年はコロナ禍で研究費をほとんど執行できなかった。そのため、補助事業期間延長を申請することを予定している。
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