研究課題/領域番号 |
20K14346
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分12020:数理解析学関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
若杉 勇太 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 准教授 (20771140)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 消散型波動方程式 / 非線形波動方程式 / 時間大域解 / 解の爆発 / 漸近挙動 / 臨界指数 / FLRW計量 / 力学的境界条件 / 数値解析 / 平滑化評価式 / 非線形問題 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,摩擦や抵抗の効果を伴う物理現象を広く記述する消散型の発展方程式に対し,初期状態を与えたときの可解性・解の一意性・初期値に対する連続依存性(この三つをまとめて初期値問題の適切性という)および,解の長時間挙動を解析する手法を構築する.本研究では,方程式の解に対する平滑化評価式とよばれる時空ノルム評価に着目し,まず基本となる線形問題の平滑化評価式の導出と,次にその応用として非線形方程式の初期値問題の適切性,解の長時間挙動の解析を行う.
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研究実績の概要 |
(1) 津田谷公利氏(弘前大学)との共同研究で、Hubbl定数を含むFriedmann-Lemaitre-Robertson-Walker時空(FLRW時空)における非線形波動方程式およびそれを一般化した問題について、解の有限時間爆発および最大存在時間の上からの評価を与えた。もとのFLRW時空のモデルでは、パラメータの値に応じて消散項の形が効果的な場合と散乱的な場合の2つに分かれるが、これに対応して一般化した問題においても消散項の種類に応じて異なる最大時間評価が得られることを示した。また、散乱的な消散項の場合には、初期速度の積分平均が0かどうかに応じて最大存在時間が変化するという、定数系数の非線形波動方程式において知られている事実と対応する結果が得られることを証明した。 (2) 池田正弘氏(理化学研究所・慶應義塾大学)、側島基宏氏(東京理科大学)、谷口晃一氏(東北大学)と共同で、2次元外部領域で2次の非線形項をもつ半線形消散型波動方程式の解の最適な最大存在時間評価について研究を行なった。2次元外部領域においてDirichlet境界条件を課す場合は、線形熱方程式の解の時間減衰が全空間の場合よりも対数オーダーの分だけ良くなることが知られている。まずは対応する線形消散型波動方程式に対しても同様の改良型減衰評価が成立することを証明した。しかし、この線形評価を単純に用いるだけでは、半線形問題のアプリオリ評価を得るには不十分である。そこで初期値に球対称性を課すことにより基本解の正値性を保証することで、解の対数重み付きのL1ノルム評価を導出し、このノルムを用いて最適な最大存在時間評価を導く解のアプリオリ評価を得ることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
FLRW時空における非線形波動方程式に対する解の爆発について一定の進展を得ることができた。今後は時間大域解の存在を示すことが課題となる。 また、従来の方法では解決が困難であった、2次元外部領域での半線形消散型波動方程式に対して、いくつかの新しいアイデアを導入して部分的ではあるものの大きい進展を得ることができた。 以上のことから研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後はまずFLRW時空における非線形波動方程式について未解決として残されている時間大域解の存在について取り組む。まずは線形問題に対するStrichartz評価式をFourier解析を用いて導出する。 また、より一般の時間変数系数をもつ消散型波動方程式に対するStrichartz評価についても研究を行う。 2次元外部領域の半線形消散型波動方程式に対しては、球対称解に対する最大存在時間評価を得ることができているので、球対称性を外して同様の結果が得られるか、という問題について考察する。
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