研究課題/領域番号 |
20K14433
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分13040:生物物理、化学物理およびソフトマターの物理関連
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
坊野 慎治 立命館大学, 理工学部, 講師 (60778356)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 液晶 / ソフトマターの物理 / キラリティー / 表面 / 散逸 / MEMS / ソフトマター |
研究開始時の研究の概要 |
小さな熱流下で等方液体相中に分散したキラルな液晶(Ch)滴は剛体回転し印加する熱流量を増やすと構造の歪みを伴う配向回転が生じる。2つの定常な運動モードは注入されたエネルギーに対して散逸を最小化するように決定される。本研究の目的は、Ch滴の非平衡定常ダイナミクスにおいて競合する2種類の散逸機構を選択する要因を解明することである。次の手順で研究を遂行する。 (1) Ch滴の剛体回転速度を定量的に測定する。 (2) Ch滴の諸物性と運動モードの転移エネルギー注入量の関係を明らかにし、散逸機構を選択する物理量を解明する。 (3) 大きなエネルギーを注入し配向構造が散逸の選択において果たす役割を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究では等方相中に分散したキラルな液晶滴の散逸構造について研究した。キラル液晶試料を液晶-等方相共存相温度に置くと、等方相中に自発的にキラル液晶滴が等方相中に分散する。このキラル液晶滴に熱流を印加すると、熱流が散逸する過程で液晶滴の一方向回転が駆動される。2022年度はキラルな液晶滴の熱駆動一方向回転を利用してMicro electromechanical systems (MEMS)デバイスからの微小な熱流を検出するメカニズムを提案した。MEMSデバイスを駆動すると、入力した電力の一部が熱として散逸する。MEMSデバイスのミクロな性質において重要な熱分布を可視化するために、キラル液晶滴を利用したメカニズムを提案した。等方液体相中に分散したキラル液晶滴に熱流を印加すると、熱流量に比例した角速度で一方向に回転する。このサーモメカニカル交差相関を熱流の検出原理として利用するために、キラル液晶滴の熱流-トルク変換効率を定量的に調べた。金ナノ薄膜をパターニングしたモデルデバイス上にキラル液晶滴を導入しキラル液晶滴の回転挙動を観察した。金ナノ薄膜に電流を印加すると、キラル液晶滴は金ナノ薄膜から発生した熱流を感知し一方向に回転する。キラル液晶滴のマイクロ熱流検出について、熱流検出の分解能を定量的に評価した。その結果、本研究で提案したキラル液晶滴を用いるメカニズムを利用するとMEMSデバイスからの微小な熱流を、高い空間分解能と高い熱流検出精度を両立して、マルチスケールで検出できることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究では熱流下に置かれたキラル液晶滴が一方向に回転する現象を利用して、MEMSデバイスから発生する微小な熱を高い空間分解能を保って可視化できることを示した。キラルな液晶の非平衡ダイナミクスが、熱流センシングメカニズムにおける高感度なセンサとして利用できることが明らかになった。これまではキラル液晶滴の回転メカニズムを解明することを主な目的として研究されていたが、本研究では、そのメカニズムを明らかにしたうえで、さらに熱流センシングメカニズムとして応用できることを示した。そのためおおむね順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究において液晶滴の非平衡ダイナミクスにおける競合する散逸構造について、そのメカニズムがおおむね解明されつつある。今後はこの現象を利用した応用研究を展開する予定である。具体的には、MEMSデバイスを模した微細な電極構造内の電場について、キラル液晶を用いた検出についての研究を進めており、液晶滴の回転が熱だけでなく電場についても検出メカニズムとして機能することがわかりつつある。そこで次年度は、この応用に注目し、実証研究を進める予定である。
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