研究課題/領域番号 |
20K14471
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
加瀬 竜太郎 東京理科大学, 理学部第二部物理学科, 講師 (10756406)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 拡張重力理論 / ブラックホール / 暗黒エネルギー / 中性子星 / 宇宙物理学 / 宇宙論 |
研究開始時の研究の概要 |
宇宙の後期加速膨張の源である暗黒エネルギーは,現在の宇宙の組成比の約70%を占めていることが分かっているが,その起源は不明である.組成比の残りの大部分である約25%を占める暗黒物質についても起源が分かっていない.本研究は一般相対論を内包する一般的な拡張重力理論に基づき上記の未解決問題に挑む.特に近年の観測で指摘されている宇宙の密度揺らぎの振幅やハッブルパラメータの不一致問題について,二つの暗黒成分の相互作用を考慮することでその解決を図る.更に近年発展の著しい重力波観測と関連し,ブラックホールや中性子星といった強い重力場を生み出す局所天体について拡張重力理論が可観測量に与える影響を明らかにする.
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研究実績の概要 |
本研究課題は暗黒エネルギーの起源解明という物理学における今世紀最大の課題の一つの解決を目指し,大スケールと小スケール双方から一般相対論を内包する拡張重力理論の検証を行うものである.初年度は主に宇宙論的な大スケールにおける研究を行ったのに対し,今年度は昨年度から引き続きブラックホール等のコンパクト天体に関する小スケールでの研究を主軸に据えた研究を行った.具体的には,U(1)ゲージ対称性を持つベクトル自由度とスカラー自由度を取り入れた重力理論であるHorndeski-Maxwell理論やU(1)-gauge invariant SVT理論に基づき,そのブラックホール摂動論に関する研究を実施した.一般相対論においては無毛定理が成立するため,ブラックホールを考えた場合には多くの場合スカラー自由度は自明な解しか許されない.しかし,これらの理論では重力理論の拡張によって,スカラー自由度が非自明な解を持ちうることが先行研究によって示されている.研究代表者はまずHorndeski-Maxwell理論に基づき摂動の解析手法を確立した.更にこれを応用することでU(1)-gauge invariant SVT理論のブラックホール摂動論を議論した.具体的には,Horndeski-Maxwell理論の偶パリティ摂動に関して,補助場を導入することでベクトル自由度由来の非動力学的摂動量を摂動二次作用から除去する手法を見出し,これをU(1)-gauge invariant SVT理論にも応用した.両理論において全ての非動力学的な摂動量を排除して動力学的な摂動量のみからなる摂動二次の作用を求め,更にエネルギーが下に有界となる条件,動径/角度方向への摂動の伝搬速度を導いた.これらの結果を用いることで,数多く存在する拡張重力理論に基づくブラックホール解の安定性検証を一括して行うことが可能となる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」に記載した研究に関して,Horndeski-Maxwell理論に関する研究成果はすでにPHYSICAL REVIEW D誌において掲載が決定しており近日中に出版される.U(1)-gauge invariant SVT理論の研究成果は現在論文としてまとめおり,近く公開予定である.また,2022年度は上記の他に,宇宙論的スケールにおける観測からの重力理論の検証に関する論文の分担執筆を行なっており,当該論文は国際論文誌において掲載が決定しており近日中に出版予定である.当初予定と比較しておおむね研究は順調に進展しているが,2022年度は引き続き新型コロナウイルス蔓延の影響により研究を行う上で障害が発生している状況である.このため,本研究課題は令和4年度での終了を予定していたが,一年延長し令和5年度に全ての研究を終了させる予定である.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度にはスカラー自由度を含む理論のブラックホール/中性子星摂動論を,2022年度にはU(1)ゲージ対称性を持つ重力理論におけるブラックホール摂動論の研究を行った.ここまで研究対象としてきたベクトル自由度はmagnetic chargeが存在しない場合に限定しているが,量子色力学において現れる暗黒物質候補であるaxionを取り入れたブラックホールの場合はベクトル自由度の持つmagnetic chargeの存在が重要な役割を果たす.2023年度はこのような場合も包括して摂動解析が行えるフレームワークの構築を目指す.これにより,拡張重力理論に基づく広範な理論模型におけるブラックホール解の安定性を判別することが可能となり,またブラックホール準固有振動のような具体的な物理現象に適用して観測結果との比較を行うことが可能となる.
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