研究課題
若手研究
銀河宇宙線の起源は高エネルギー宇宙物理の未解決問題の1つである。それは、「熱的粒子の一部が衝撃波により加速され、徐々に高いエネルギーになるプロセス」と理解されている。しかしこれまでは高エネルギー宇宙線(GeV-TeV帯域)しか観測されておらず、低エネルギー宇宙線(keV-MeV帯域)は未観測だった。申請者は「中性鉄からのX線輝線を用いた低エネルギー宇宙線測定」という新しい手法を「すざく」衛星の観測データを用いて実証した。本研究は、NuSTAR、XRISM衛星によるX線観測を用いて低エネルギー宇宙線の空間分布とエネルギースペクトルを初めて明らかにする。これにより、銀河宇宙線の真の起源を解明する。
超新星残骸 (SNR) は銀河宇宙線の起源と考えられている。まず、銀河系内のSNR W51Cをすざく衛星で観測し、低エネルギー宇宙線が星間物質中の中性鉄原子を電離することで放射されたと考えられる中性鉄輝線を2.0σの有意度で検出した。結果を査読付き論文として出版した。さらに、銀河系中心の西側の領域に存在する超新星残骸で、低エネルギー宇宙線起源の中性鉄輝線の系統的な調査を行った。そのうちG346.6-0.2からは、低エネルギー宇宙線起源の可能性が高い中性鉄輝線を3σの有意度で検出した。また、電波天文学の専門家との共同研究で、G346.6-0.2に付随する分子雲を初めて特定した。電離率、中性鉄輝線、ガンマ線放射に寄与する宇宙線陽子のエネルギーはそれぞれ異なる。3つの観測量を同じ場所で観測すれば、広帯域な宇宙線の情報が得られ、宇宙線の分子雲中での伝播の過程を制限できることを、理論分野の専門家との共同研究で明らかにした。さらに、中性鉄輝線とガンマ線が両方観測されている領域で電離率を測定するため、ALMA望遠鏡の観測提案を行い、W44とIC443の観測が採択された。観測が行われ次第、分子雲中での伝播過程を明らかにしたい。低エネルギー宇宙線は宇宙線加速と星・惑星形成の両方の観点で重要だが、両分野の研究者が同じ研究会に集う機会はあまりない。そこで『低エネルギー宇宙線Workshop2021』を2021年3月にオンラインで開催し、関係する国内の研究者と情報交換と活発な議論を行い、好評であった。2023年度打ち上げ予定のXRISM搭載CCD検出器Xtendは、広い視野と大きな有効面積を持ち、低エネルギー宇宙線起源の淡く広がった中性鉄輝線の観測に最適である。Xtendの性能を最大化するため、地上試験データを用いて新しい較正手法を確立し、成果を査読付き論文として出版した。
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すべて 雑誌論文 (17件) (うち国際共著 5件、 査読あり 16件、 オープンアクセス 10件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
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