研究課題/領域番号 |
20K14717
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分21010:電力工学関連
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
小山 昌人 三重大学, 工学研究科, 助教 (50804473)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | スパイラルモータ / 波力発電 / 最大電力点追従制御 / 機械インピーダンス制御 / 2入力2出力系最適制御 / 省電力磁気浮上系 / 最適力制御系 / 外力推定 / 電気機器工学 / 電力回生 / アクチュエータ / 制御工学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は独自開発してきた従来のリニアモータ(直動形同期電動機)より約2倍から10 倍程度近い推力密度を有し、かつ省電力磁気浮上による低摩擦損失を実現する本モータを用いた波力発電システムの開発に関する研究であり、下記事項の実現を目的とする。 (1) 駆動装置を含めたスパイラルモータの回生特性を数学モデルなどから導出し、波力エネルギーを効率よく吸収するための条件を明らかとする。 (2) (1)より、発電量最大化制御と省電力磁気浮上制御を同時実現する制御システムを開発、従来と同等以上の発電性能を実現する。 (3) 推力密度を大幅に向上させた最新試作機を作成、(1)(2)より更に高効率な発電を実証する。
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研究実績の概要 |
令和4年度では1.スパイラルモータ新試作機の固定子巻線製作,製作難度低減のための治具作成,2.海洋波周波数変化に応じたパラメータ切替での瞬間的な効率低下抑制制御手法,3.エンコーダ等の観測誤差,ノイズによる影響,相補感度関数を抑制しながらも運動制御性能を保持するための制御器設計,を実施した.1.前年度より巻線配置を改善し,コイル巻き数を12から13としたほか,巻線損傷の原因となる固定子角部を避けられる巻線用治具を製作した.これらにより実機製作難度は低下し,1層分のみだが電磁界解析と実機のインダクタンス値がほぼ等しくまた従来より増加させることに成功した.しかし,最終層付近で損傷による短絡が発生したため,固定子の根本的な構造から見直すこととなった.2.波周波数に応じてスパイラルモータ機械特性を見かけ上変更する機械アドミタンス制御のパラメータ変更法を検討し仮想機械モデル計算の修正により効率改善が出来たが,パラメータ変更による指令値の不連続変化も影響を与えていると判った.そのため,回生効率最大化のための仮想機械モデルと制御器間に新たに不連続変化を抑制する手法を提案,解析解,数値解より定常状態の効率に影響を与えずに切替時の効率改善できることを確認した.3.前年度に設計した最適力制御・磁気浮上同時最適制御系について,相補感度関数が高周波領域において高くセンサ観測誤差の影響が大きいことが分かったため,感度関数の理論解析を行った.現在の条件では観測誤差に対する相補感度関数が10~500rad/sの帯域において従来法より低いが最大感度(いずれも1000rad/s付近)は5dB程度高くなるとわかった.本年度は状態推定器を導入し最大感度を従来法と同等にした. これらの成果について査読付き国際会議2件,査読なし国内会議・研究会3件で発表している.実績3については今後発表を行う予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題では1.高推力密度を有する新型試作機の製作またこれによる実証,2.駆動装置を含めたスパイラルモータ波力発電での回生特性とその最大化,3.高性能な回生,省電力磁気浮上同時制御器,を目的とするものである.令和4年度での各項目の進捗状況を列記する.1.巻線配置の変更により巻き数を増加,固定子角部を部分的に覆うよう治具を再設計し巻線損傷防止策を講じた.これらにより従来の巻き方では10.1μHであったが約13.6μHに向上させ,かつ安定して製作可能となった.しかし,最終層製作時に巻線損傷が生じたため固定子の根本的な再設計が必要と本年度では結論づけた.2.前年度までに波力周波数に応じたパラメータ切替時に瞬間的に効率が悪化するとわかり,生成された指令が不連続変化するためと数値解により明らかにした.そこで回生制御用仮想機械モデルと制御器間に高周波な変化を吸収するための新たな仮想機械モデルを挿入した.数学モデルによる解析解および数値解の双方により検証を行い,定常状態での効率に変化を与えることなく,切替時に生じていた損失を十分の一程度に減少させることに成功した.3.本年度ではセンサ観測誤差に対する制御器の感度関数を精緻に評価し,状態オブザーバによる抑制を試みた.現在の条件において約700rad/sまでは提案法のほうが低感度だがこれより高周波側では高くなり,最大感度は5dB程度高いとわかった.そのため,状態推定器によって最大感度を従来法と同程度にすることに成功した. 以上より制御器設計では当初の計画通り基本的な最大化手法の提案・基礎検証が出来ており,性能向上手法の検証に入っている.実機製作では再設計のため時間を要しているが部分的な性能検証が行えたこと,コロナ禍により実製作工程を満足にできない期間が初期に続いたことからおおむね順調なスケジュールと言える.
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度の各目的に対する推進方策を次に列記する.1.試作機製作について,一体形固定子では巻線製作の難しさから防止策を講じてもなお巻線損傷が生じたため,多少の推力減少を許容し分割形固定子を設計・製作する.分割形では組み付け精度の問題が生じるため非磁性材料を使ったフレームに固定子鉄心・巻線を挿入する形状を現在設計している.スパイラルモータ加工実績のある企業に試案した形状を相談,予算の確認をしたうえで製作依頼を行う.これの結果次第では一体形固定子での製作方法も継続して検討を行う.2.令和4年度では主に理想的な駆動回路を想定した数値シミュレーションを行っていたため,更なる妥当性検証が必要である.そのため回路シミュレータによる可能な限り現実に近い数値シミュレーションや横浜国大 藤本教授所管の試作2号機による実機実験によって提案する回生制御の性能評価を行う.新型試作機の製作が完了し駆動を確認でき次第,こちらでの実証実験を実施する.3.カルマンフィルタなど白色雑音の除去を陽に考慮した状態推定手法やエンコーダによる観測誤差では特に擬似微分による微分ノイズが顕著に影響を及ぼすためスライディングモード微分器など様々な微分器設計も視野に提案する最適力・省電力磁気浮上同時制御の制御性能を損なわずに観測誤差に対するロバスト性向上を図る.
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