研究課題/領域番号 |
20K14836
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分22040:水工学関連
|
研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
比嘉 紘士 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 准教授 (60770708)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | 人工衛星 / 大気補正 / 海色リモートセンシング / 水中モデル / GCOM-C/SGLI / AERONET-OC / 水質推定 / 沿岸域 / しきさい / GCOM-C / 水色リモートセンシング / 大気補正モデル / 高濁度水域 |
研究開始時の研究の概要 |
近年,人工衛星の著しい技術発展により,非常に高い時空間分解能での地球観測が可能となり,特に,人間の生活環境に近い沿岸域や湖沼の持続的な水環境モニタリングへの活用に期待されている.しかしながら,沿岸域,湖沼における水中の光学特性の複雑性により,適切な大気補正手法及び水質推定手法は未だに確立されておらず,誤差が生じるため実利用には程遠い状況である.本研究では,現地観測により様々な沿岸域・湖沼の固有光学特性を解明し,これらの実測値に基づき沿岸域・湖沼に特化した新たな大気補正・水質推定手法を構築する.これにより,衛星データを用いて高濁度水域における恒常的な水質モニタリング手法の確立を目指す.
|
研究実績の概要 |
今年度は,昨年度まで実施していた沿岸域・湖沼に適した大気補正・水質推定モデルの開発に向けた光学・水質の実測値の取得を継続し,本研究にて開発した大気補正・水中モデルの検証を行った.光学データは,東京湾の湾奥部に設置した光学放射計が連続的に大気・水中の光学データを取得した.さらに,昨年度の現地観測を実施した東京湾に加えて,有明海,霞ヶ浦を対象水域に追加し,船舶観測の実施により,GCOM-C/SGLIの人工衛星との同期観測データ(各物質の光吸収係数,後方散乱係数等の光学実測値及び植物プランクトンの色素,浮遊懸濁物質等の水質濃度の実測値)を取得した.また,湾奥部に設置した光学放射計によって,赤潮や青潮の発生時の連続的な海面射出輝度,エアロゾル光学的厚さの測定を継続することができ,3年間のデータ蓄積に成功している. 2. 衛星データによる水質・大気補正モデルの構築 取得した水質・光学データの実測値を使用して,昨年度開発した大気補正・水中モデルの精度検証及び,開発モデルの簡略化を実施した.大気補正について,蓄積したAERONET-OCのリモートセンシング反射率(Rrs)実測値及びSGLIが測定した大気上端の放射輝度を使用し,線型結合型指標を利用した簡易大気補正モデルを開発し,その有効性を確認することができた. また,水中モデルの検証では,全球及び日本の高濁度水域で取得されたRrsと固有光学特性(IOPs)の実測値を使用し,光学特性に基づく水塊分類を実施し,分類した水塊ごとにSIOPsを割り当てるIOPsインバージョンモデルを開発した.また,作成したモデルは,ハイパースペクトルセンサーによる複数波長をinputすることでIOPs推定の高精度化が可能であること分かった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現地観測により大気補正・水質推定モデル開発のための光学・水質データの取得が,今年度から対象水域を追加し問題なく進んでおり,順調にデータの蓄積ができている.既に東京湾のモニタリングポストに自律型の放射計を設置し,海面射出輝度,エアロゾル光学的厚さのデータ取得が連続的に行われており,3年間のデータを蓄積することができた.これらの光学データを使用し,線型結合指標に基づく大気補正モデルを開発することができ,従来手法と比較して大幅に高精度化することができた. また,外洋域及び沿岸域の光学特性が大きく異なる水域で実測した光学データを使用し,IOPs推定アルゴリズムの検証が順調に進められている.これによって,光学特性が異なる様々な水域において,どのような手法がIOPsの推定に有効かどうか明らかにした.さらに今後は水塊ごとに光学特性を分類することによって,対象の水塊に適した手法を適用することにより,IOPs推定の汎用性を向上させることが課題となる.これらのことから,現地観測及び大気補正・水質推定モデルの精度検証に関する進捗として,概ね順調に進展していると言える.残りの期間では,船舶観測における固有光学特性の実測値をさらに収集し,開発した大気補正モデル・水質推定モデルの精度検証を実施し,開発したモデルが季節変化や衛星の幾何条件の変化に対して安定的にRrsやIOPsを高い精度を維持しながら推定可能かどうか検証予定である.また,複数の沿岸域,湖沼においてのIOPs推定の精度は確認中であるが,様々な水域の光学特性を有効に分類する手法の確立や,水中モデルだけでなく大気補正モデルにおいても精度検証を十分に進める予定である.
|
今後の研究の推進方策 |
船舶による光学・水質観測では,引き続き大気補正・水質推定モデル開発と精度検証のための光学・水質データの取集を進め,開発したIOPsベース及び線型結合指標の大気補正の検証を進める.また,衛星データと船舶観測との同期データがまだ不足しているため,今後も引き続き計画的にデータ収集を進める.設置した自律型の放射計は,維持,管理を継続的に行うだけでなく,他水域の公開データを利用することで,各水域の光学的特徴を把握し,大気補正・水中モデルの誤差要因の特定と精度検証を実施予定である.さらに,光学・水質データの実測値を使用した検証を引き続き進めると伴に,水塊分類の結果に基づいた大気補正モデル・水質推定モデルの汎用性の向上を目指す.大気補正モデルについては,線型結合指標に基づく大気補正モデル適用範囲の拡張のため,ルックアップテーブル手法と,ニューラルネットワークベース等のマッチング手法の開発を同時に進め,精度検証を行う.また,水中モデルについては,水塊分類による水質推定のアルゴリズムについては,ルックアップテーブルを使用した手法,スペクトル最適化手法を使用した複数の方法を検討し,最も汎用性が高く,精度の高い手法を選択する.また,これまで蓄積した人工衛星・船舶観測・AERONET-OCを使用し,SGLIの衛星データに開発した大気補正モデル・水中モデルを適用することでその有効性を確認する.
|