研究課題/領域番号 |
20K15337
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分35010:高分子化学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
高橋 倫太郎 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (10794125)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2022年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2021年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2020年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
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キーワード | 透過型電子顕微鏡 / 時間分解小角X線散乱 / ベシクル / ブロック共重合体 / イオン液体 / 高分子ベシクル / メカニズム |
研究開始時の研究の概要 |
高分子ベシクルがどのようなメカニズムで形成されるのかを明らかにすることを目的とする。その手法として、溶液状態での透過型電子顕微鏡 (LC-TEM)法 と時間分解小角X線散乱(SAXS)法を用いる。この手法によってベシクルが形成される様子を溶液状態のまま直接的に観察する。 高分子ベシクルは、ドラッグデリバリーシステムなどへの応用が期待されている。実用化ためには、サイズを精密に制御することや物質の取り込み効率を上げることが求められる。それらの課題と形成メカニズムは密接に関わっている。それにも関わらず、観測の困難さから研究が進んで来なかった。本研究は、最先端の手法を用いてこの課題に挑戦するものである。
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研究実績の概要 |
本研究は、高分子ベシクルがどのようなメカニズムで形成されるかを解明することを目的とする。そのために、溶液状態での透過型電子顕微鏡 (LP-TEM) 観察 と時間分解小角X線散乱 (TR-SAXS) 測定を行うことにより高分子ベシクルが形成する過程をその場で観察することを試みてきた。これまでのTR-SAXS測定によって、球状ミセル→棒状ミセル→ディスク状ミセル→ベシクル と形態が変化してベシクルが形成されることを明らかにした。その一方で、LP-TEM観察は、(1) サンプル溶液を測定用のセル(グリッド)に再現性よく均一に所望の量を乗せることが困難で、(2) 溶媒の電子密度が高く明瞭な像が観察できず、(3) ミセル・ベシクルのブラウン運動が速いためにそれらを追跡するのが困難であった。そのため、ベシクル形成過程を完全に観察することには至っていない。 R4度は、LP-TEM観察におけるこれら課題を解決するために、これまでに使用してきた溶媒よりも高粘度で、電子密度の低い溶媒(1-Butyl-3-methylimidazolium Hexafluorophosphate; [BMIM][PF6]) にモデル粒子(ポリエチレングリコールとポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)から成るブロック共重合体のミセル)を対象として実験を行った。 また、サンプル作製時にテトラヒドロキシフラン等の揮発性有機溶剤と、上記の高分子溶液を混合し、その溶液をグリッド上に滴下して減圧することにより、高分子と不揮発性の[BMIM][PF6]がグリッド上に残り、LP-TEM観察に適した液量を比較的再現性良くグリッド上に乗せることができた。このようにして、これまでよりも明瞭にミセルがブラウン運動する様子をLP-TEMによって観察することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度判明したLP-TEM観察における課題[(1) サンプル溶液を測定用のセル(グリッド)に再現性よく均一に所望の量を乗せることが困難であること、(2) 溶媒の電子密度が高く明瞭な像が観察で着ないこと、(3) ミセル・ベシクルのブラウン運動が速いためにそれらを追跡するのが困難であること]について、上述の方法によって、少しずつ改善することができた。 また、このようにして得たミセルに対するLP-TEM観察による構造解析を含む論文もMacromoleculesに掲載されたところである。 以上のことより、概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究によって、粒子が動く様子をこれまで以上に明瞭に再現性良く観察することができたが、ブラウン運動はまだなお速いために、長時間にわたって一つの粒子の運動観察することはできていない。これが現時点で最も重要な課題であると考える。粘度がより高い溶媒を用いることで、この課題を解決できるはずである。 そこで2023年度は、これまでよりもさらに粘度が高い溶媒を用いて実験を行う。現時点では1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムカチオンと種々のアニオンからなるイオン液体を用いることを考えている。このような溶媒において、温度変化によって自発的にベシクルを形成する高分子を探索する。ベシクルが形成されるか否かを判断するための構造解析はTEMだけでなく小角X線散乱測定も併せて行う。 さらに、電子密度が高い高分子を合成して、より鮮明に高分子集合体を観察することも試みる。
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