研究課題
若手研究
福島原発事故から9年が経過した現在においても、樹体内の放射性セシウム濃度が増加傾向の森林が存在する。樹木による放射性セシウムの吸収メカニズムを明らかにすることは、樹体内の放射性セシウム濃度を予測する上で欠かすことができない情報である。本研究は、樹木に吸収されやすい土壌中の「溶存態と交換態の放射性セシウム」に着目する。これら溶存態と交換態の放射性セシウムが、樹木根圏への水と物質の集中的な流入経路である「樹幹流」によって土壌深部へ供給され、それら土壌深部の溶存態と交換態の放射性セシウムが、樹体内の放射性セシウム濃度変化に寄与していることを明らかにする。
本研究は、樹木に吸われやすい放射性セシウムが樹幹流により土壌深部へ供給されること、土壌深部に存在するこれら放射性セシウムが樹木に吸収されることを明らかにする。これらから、材の放射性セシウム濃度変化は、樹幹流による放射性セシウム供給が引き起こしていることを解明する。今年度は、福島県川内村の材の放射性セシウム濃度の低下傾向が緩やかなサイト(緩慢サイト)と明瞭なサイト(明瞭サイト)に設置した林内雨調査プロットにおいて、月に1度の頻度で樹幹流による放射性セシウム供給量を調査した。その結果、昨年度と同様、明瞭サイトより緩慢サイトの方が樹幹流により放射性セシウムがより多く根圏に供給された。また、緩慢サイトと明瞭サイトにおいて、各サイト5本のスギを対象に、東西南北4方位の根元周りに亜鉛置換フィルターを深さ5 cm、10 cm、15 cmに設置し、水に溶けた溶存態の放射性セシウムの土壌深部への供給量を調べた。その結果、両サイトとも樹幹流が流入する方位で、土壌深部における溶存態の放射性セシウム蓄積量が多い傾向が見られたが、その傾向は樹幹流供給量の多い緩慢サイトの方が明瞭であった。さらに、両サイトの土壌中の交換態の放射性セシウム蓄積量と樹木の辺材の放射性セシウム濃度の関係を調べた。しかし、明瞭な傾向は見られなかった。これらの結果から、樹幹流による供給が多いと選択的に土壌深部へ水に溶けた形態で放射性セシウムが供給されることが明らかになった。しかし、それらが樹木の吸収に寄与しているかについては、引き続き検討が必要である。
3: やや遅れている
当初予定していた、土壌から材への放射性セシウム吸収メカニズムの解明に手こずっている。
材と土壌の放射性セシウムと安定同位体セシウム濃度の関係から、樹木による土壌中の放射性セシウム吸収箇所の特定を行う。これにより、樹幹流により供給された放射性セシウムが、土壌から樹木に吸収され、材の濃度変化に影響していることを明らかにする。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 2件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件) 備考 (3件)
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