研究課題
若手研究
自己組織に対して応答するT細胞 (自己応答性T細胞) が自己の組織を傷害すると、自己免疫疾患を発症する。自己応答性T細胞の多くは胸腺で除去され、自己免疫疾患の発症は未然に防がれる。胸腺での除去機構に、胸腺の髄質領域に局在する抗原提示細胞が必須である。胸腺髄質には髄質上皮細胞、B細胞、樹状細胞が局在し、胸腺内で”成熟して”機能すると考えられている。これまでの研究で髄質上皮細胞、B細胞は成熟の機構が明らかとなっているが、樹状細胞の成熟と局在を誘導するシグナルは未同定である。本研究は、胸腺樹状細胞の成熟を制御するシグナルを同定し、自己免疫疾患発症における重要性を明らかにする。
胸腺の髄質領域には抗原提示細胞が局在し、自己応答性T細胞へ自己抗原を提示することで自己応答性T細胞は細胞死が誘導される。このように胸腺では大部分の自己応答性T細胞が除去されることで、自己免疫疾患の発症が未然に防がれている。胸腺髄質には髄質上皮細胞、B細胞、樹状細胞が局在し、抗原提示には成熟することが必須である。本研究では、TNFレセプターファミリーRANKとCD40が、胸腺樹状細胞の成熟に必要であることを明らかにした。RANKとCD40はTRAF6を介して古典的NF-kB経路を活性化し、胸腺樹状細胞を成熟させる。すなわち、本課題により胸腺樹状細胞の成熟機構の一端が明らかになった。
1型糖尿病、関節リウマチ等、自己免疫疾患の患者数は年々増加しているが、有効な治療法は限られており、新たな治療法の確立が喫緊の課題である。本研究では、リンパ組織である胸腺による自己免疫疾患発症抑制に着目した。T細胞は胸腺で分化するが、その過程で自己組織に反応する自己応答性T細胞は除かれる。自己応答性T細胞の除去には胸腺髄質に局在する抗原提示細胞が重要である。抗原提示細胞の一種である胸腺樹状細胞は自己応答性T細胞の除去に関わると言われている。本研究により、自己抗原を提示するために必要な”成熟”機構が明らかになった。今後、この知見を利用して自己免疫疾患の発症機構の理解が進展すると期待できる。
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