研究課題
若手研究
新規転写抑制因子teashirt homolog 2 (以下TSHZ2)は、その量が正常乳腺と比較して乳癌では高度に減少している。本研究では、TSHZ2の低下は、乳癌が悪性の形質を持つ原因の一つであることを証明し、その機構を解明することを目的とする。具体的には、試験管内の実験で正常乳腺細胞のTSHZ2を低下させ、細胞が転移、薬剤耐性といった悪性形質を獲得することを確認する。そして、悪性形質獲得に関わることが分かっている既知の遺伝子のうち制御にTSHZ2が関わるものを同定し、そのメカニズムを詳細に解析する。更に、実際に摘出された乳癌組織を用いて上記の結果と臨床的特徴との関連につき検討する。
本研究は、新規転写抑制因子teashirt homolog 2 (以下TSHZ2)の乳癌での機能解析および臨床的意義の解明、病理診断への活用を目的として進めてきた。本研究で樹立した正常乳腺上皮細胞株のTSHZ2遺伝子ノックアウト細胞株には、間葉系細胞様への形態変化がみられた。この背景にある分子機構を解析する中で、TSHZ2の複数のアイソフォームの発現パターンが正常と癌で異なり、それが上皮間葉転換を始めとした悪性形質に関係している可能性が明らかになった。今後はこの発現パターンと臨床病理学的特徴との関連解析を行い、乳癌のサロゲートマーカーとしての応用を目指す。
本研究の成果により、正常乳腺上皮細胞が癌化する過程において間葉系細胞様への形態および機能を獲得する際、癌抑制遺伝子のアイソフォーム発現パターンが変化するという新たな側面から知見を得た。この変化を定常状態に戻すことは癌細胞の生存にとって不都合であると推測され、乳癌の新規治療薬開発の糸口となる。また、このパターン変化を利用し、乳腺腫瘍の診断マーカーとして応用することもできる。アイソフォーム発現パターンを組織上で可視化し、パネリングすることで良悪性の判断に迷う早期乳癌の病理診断を行うためのツールとして提唱できる。
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