研究課題
若手研究
インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼはウイルス増殖の中心的な役割を担っており、理想的な薬剤ターゲットとして注目されてきた。これまでに、インフルエンザRNAポリメラーゼに特異的に結合し、細胞内でウイルス増殖を抑制するモノクローナル抗体の取得に成功した。本研究では、開発した阻害抗体がどのようにインフルエンザRNAポリメラーゼに結合し、ウイルス増殖阻害作用を発揮するのかを立体構造解析によって明らかにする。
クライオ電子顕微鏡による単粒子解析によって、インフルエンザRNAポリメラーゼとその阻害抗体について、複合体の立体構造解析を行った。その結果、分解能7.2 Åでの解析に成功し、それらの結合領域を明らかにすることができた。また、解析した立体構造を基に、抗体の増殖阻害作用について考察した。相互作用解析の結果から、抗体はインフルエンザRNAポリメラーゼのRNA結合を阻害することで、ウイルス増殖を抑制していることが示唆された。
近年、新型インフルエンザウイルスによるパンデミックが懸念されており、さらに薬剤耐性ウイルスの出現についても報告されていることから、新たな抗インフルエンザ薬の開発が急務とされてきた。インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼは、ウイルス増殖の中心的な役割を担っており、他のウイルスタンパク質と比べ変異が起こりにくいという特徴から理想的な薬剤ターゲットとして注目されてきた。本研究では、インフルエンザRNAポリメラーゼにに対する阻害抗体について、その結合領域や作用機構を調べた。本研究成果によって、阻害抗体から低分子医薬への展開など従来の発想にはない新規抗インフルエンザ薬の創薬が期待される。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Nature
巻: 606 号: 7916 ページ: 1027-1031
10.1038/s41586-022-04857-0