研究課題
若手研究
セロトニンは重要な神経伝達物質としてこれまで研究が進められてきた一方で、腫瘍の進展に及ぼす影響についての詳細な解析はなされていない。しかしながらある種のセロトニン受容体は悪性腫瘍において高発現が認められ、その発現が予後不良と相関することから、悪性腫瘍においても何らかの機能的役割を担っている可能性が示唆される。本研究では、扁平上皮癌に発現するセロトニン受容体に着目し、悪性腫瘍の形成及び進展に及ぼす影響を生体レベルで明らかとする。さらに、セロトニンシグナルの悪性腫瘍における治療標的としての可能性を検討し、新規治療法の開発を試みる。
口腔、食道、肺などの扁平上皮癌において高発現が認められるセロトニン受容体HTR7に着目し、その悪性腫瘍の進展に及ぼす影響の解析を行った。口腔扁平上皮癌細胞株においてHTR7をノックダウンすると、In vivoにおいて、造腫瘍性の顕著な低下、未分化腫瘍細胞の減少が認められた。また、In vitroにおいてはHTR7のノックダウンによる細胞分化の促進が認められた。さらにはHTR7シグナル下流Gタンパク質であるG12のノックダウンにおいても同様に細胞分化の促進が認められた。以上のことから、HTR7はG12シグナルを介して細胞分化を抑制することにより、扁平上皮癌の進展に寄与することが示された。
臨床における有効な扁平上皮癌の治療法は限られており、さらなる新規治療法の開発が望まれる。本研究においては、セロトニン受容体HTR7が扁平上皮癌の分化を抑制することで、悪性腫瘍の進展に関わっていることが明らかとなった。HTR7はすでに多くのアンタゴニストが開発されている受容体でおり、本研究の成果により、これらHTR7に対するアンタゴニストが扁平上皮癌に対する新規治療薬として応用できる可能性が示された。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (7件)
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