研究課題
若手研究
INSM1については、これまで消化管を含めた全臓器のNETにおいて、免疫染色や遺伝子解析の結果で発現が確認されているが、いずれの臓器においても、いまだ臨床病理学的診断への応用には至っていない。SCLCは、肺癌の中でも10~20%の頻度であり、診断時に手術不能の進行例であることも多いため、SCLCにおける感度・特異度の高い診断マーカーとして、INSM1が臨床診断に応用できることを示すため、臨床検体を用いて検証し、INSM1の免疫染色の臨床応用を目標としている。
原発性肺癌における切除検体のINSM1の蛋白発現は、肺腺癌では10%以下、肺扁平上皮癌では10%以下で陽性であり、SCLCでは90%以上 が陽性、LCNECでは60%以上が陽性、カルチノイドでは90%以上が陽性であり、神経内分泌腫瘍にINSM1が特異的に発現していることが示唆された。細胞株の実験においてINSM1は腺癌細胞株では免疫組織化学染色法・ウエスタンブロット法ともにほぼ全例陰性であったが小細胞肺癌株ではINSM1は免疫組織化学染色法・ウエスタンブロット法ともに80%程度で陽性であった。 本研究によりINSM1はSCLCの検出において高感度かつ特異的であり予後を推定できる可能性がある。
INSM1によってNE分化の経路に変化が起き、INSM1がSCLCの発生に関与していることが示唆された。現在の肺癌の診断には、肺腺癌ではTTF-1が、肺扁平上皮癌ではp40が、免疫染色による診断マーカーとして広く用いられているが、SCLCにおいては、単独で感度・特異度の高い診断マーカーが存在しなかったが、INSM1が単独でSCLCの新たな診断マーカーとなることを検索した本研究は、高い独自性を有する。研究においても微小検体を用いたINSM1の免疫染色が評価可能か、診断マーカーになり得るか解明することで、手術不能な進行再発SCLCにおいても診断への応用が期待できると考える。
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